5月13日(火)
『ヴォーグ』や『マリークレール』などのファッション誌を中心に活躍する写真家のノブオ・タカノさんが十六日から、母校のパナメリカーナ美術デザイン学校で回顧展を開く。
タカノさんは十三歳でブラジルに移住、九〇年から生活の拠点を再び日本へ戻している。現在の仕事のぺースは「東京に半年。残りがパリ、ニューヨークそしてサンパウロかな」と流行の先端を行く都市を飛び回る日々だ。
パナメリカーナは今年創立四十周年を迎え、今展を記念展の第一弾に選んだ。母校に錦を飾ったタカノさんは「ファッション写真はただファッションを映す写真でなく、人間の普遍的な美しさを表現する仕事。この機会に分かってもらえれば」。後輩に対しては「自分のやり方を信じて突き詰めて欲しい。中途半ではだめ」と忠言する。
佐賀県の出身。八歳で写真に興味をもった。伯母がドイツで買ってきた二眼レフのカメラがおもちゃになった。来伯後パナメリカーナに進学し本格的に学び始める。プロとしての道を歩み始めてからは「自分の人生と広告・ファッションの流れを絡めた写真を意識してきた」。日本、ブラジル、アメリカ、フランス……異文化の中で培った生き方、姿勢を大切にしている。
今展の企画者の一人、マッシモ・ジュニオールさんは「彼はいつも仕事をする国のスタッフと組む。だから出向いた先の土地の空気を十分に映した作品が指摘する。
会場には縦横一メートル二十センチに引き伸ばされた九十五枚の写真が展示される。ジウベルト・ジル、ントニオ・ファグンデスといった著名人の肖像写真から、サンパウロ市のルス駅で撮られたファッション写真まで。ルス駅での撮影は早朝、駅を封鎖して行われた。「これがあのルスとは思わないでしょう。見逃されがちな場所の美しさを引き出して表現するのも仕事」。この写真は世界中のデパートなどに貼られた。
いま興味の対象は「黒人の肉体」にある。「計り知れない神秘を感じる」そうだ。今展にも「仕事を離れてアートとして撮影した」という、「黒人」をテーマにした作品七点が並ぶ。
オープニングは十五日午後八時から。入場無料。グロエンランジア通り七十七番。二十九日まで。