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IMF 経済基盤強化を要求=改革まだ初期段階=ブラジルは難問山積=FTAA取り組み評価

5月1日(木)

 【フォーリャ・デ・サンパウロ紙四月三十日】国際通貨基金(IMF)のケーラー専務理事は二十九日、ワシントンで開催された米州地域審議会の講演会で、ブラジルおよびラテン・アメリカ諸国に一連の経済改革を要求した。その中で、現在進行中のブラジルの改革は初期段階に過ぎないと述べ、まだ経済的に難問が山積しており薮の中から抜け出すのは困難とした。しかし、米州自由貿易地域(FTAA)構想に前向きに取り組み始めたことは評価した。

 政府は苦心惨たんの末、年金改革案の国会上程にこぎつけた。これに対し、IMFは引き続き一連の経済改革を要求している。社会福祉政策や民間企業の国際競争力強化、知的所有権の徹底、FTAAに対する積極的取り組みに米政府は注目していると、IMFは報告した。
 ブラジルの経済政策では緊縮政策を採りカントリー・リスクを少なくさせたことにIMFは評価。一方でラテン・アメリカ地域の経済改革は緩慢で、経済基盤が依然として脆弱(ぜいじゃく)であると同専務理事は警告した。
 ラテン・アメリカ諸国は米案に従い九〇年代から経済改革に取り組んだが、根を下ろすには至っていない。改革は具体性と計画性に乏しく、効果も出ていないとIMFは見ている。国際競争力のない公社を民営化したことで、電力会社や電話会社が経営難に落ち込んでいることも、IMFは指摘した。
 社会福祉では「飢餓ゼロ」計画を画期的な試案として、IMFは成り行きを注目している。低所得層の見直しはこれまでなおざりにされてきた分野で、この取り組みは国際的な傾向となっている。
 ブラジルは当初、米案FTAA構想に消極的であった。同構想はブラジルの後発性のばん回に役立つと、IMFは進言している。二月提示した米案は、ブラジルとメルコスルを最後に位置付けしていた。今回の米案は米国向け農産物輸出に対し補助金を削減することで譲歩している。
 IMFは国際開発銀行(IBRD)が行った世界各国の開業手続きにかかる時間の統計比較を提示。米国はたった二日間で開業可能なのに、ブラジルはなんと八十二日間もかかると政府機関の非能率ぶりを指摘した。
 同専務理事は、ブラジル政府への特別要求事項として知的所有権に触れ、米商務省はブラジルの海賊版横行に抗議していると伝えた。IMFに報告された公文書によれば、米製薬企業が二〇〇二年、ブラジル政府に申請した知的所有権登録は一万八千件。うち受理されたのは、二件に過ぎないという。
 いっぽう、ルーラ大統領はブラジルがFTAAに参加しても、米議会はいつでも農産物に対するセーフガード(緊急輸入制限)制度を設けると、米政府に対する不信感を募らせた。対抗策として、世界に通用する農産物価格を設定できる実力をブラジルが蓄積するしかないと、大統領は強調した。