5月1日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十七日】サンパウロ市やリオ州で、麻薬中毒患者による尊属殺人が短期間に五件以上も発生した。心理学者や精神科医らは、このような事件が増加する恐れがあると懸念し、「麻薬関係の尊属殺人は突如起こるものではない。気付いた時点で手を打たず、問題を直視しなかったことから引き起こされる」と警告している。
サンパウロ大学(USP)医学部教授で、同クリニカス病院(HC)心理治療医のジョアン・A・フィゲロー氏は、麻薬中毒の子供や孫の暴力に悩む両親や祖父母に、「暴力を受けたと医師に伝え、本人が嫌がっても治療を受けさせるべき」だとアドバイスしている。
だが、どんなに誤った行動をとる子供でもかばってしまうのが親の心理。子供に殴られても医師には「階段から落ちた」。子供が麻薬を買うために無断で金をとっても、「それほどサーフボードが欲しかったのね」と目をつぶってしまう。
心理士や精神科医は、このような保護者の態度を「辛苦を伴う問題から逃れようとしている」と指摘。「親は子供が麻薬に走ったことを『自分の責任だ』と悔やむ。麻薬問題があっても医師にさえ助けを求めない。たとえ医師に相談しても、麻薬が原因であることを隠すため、解決に至らない」。
HC精神科研究所アルコール飲料・麻薬研究グループ(Grea)の指揮を執るアンドレー・マウベルジエル精神科医は、「麻薬を使用したからといって、いきなり親を殺すことはない。麻薬中毒の子供の暴力は数カ月前、数年前に始まったケースが多く、『もう限界だ』と思う状況は何度もあったはず。子供の暴力の被害者となった後から対処することは難しい。初期のころに対処すべき」と指導している。
同じくGreaのサンドラ・シヴォレット精神科医は、麻薬の影響は人によって全く違うと主張。「うつ病の傾向がある人は自殺を考えるようになる。暴力的になる人もいる」。
「援助が必要なのは患者自身だけではない。周囲で見守る家族の心のケアも必要」と同医師。例としてサンパウロ市で三月に起きた、麻薬を使用し暴力的になった息子(二六)を父親(六八)が射殺した事件を挙げた。父親は悲しみの余りうつ病にかかり、全身感染症をわずらって四月二十四日に死亡。「父親は以前から、息子の暴走に歯止めをかけようとしていた」。
シヴォレット精神科医は〃予防〃対策として、麻薬中毒の子供の様子を観察するよう勧めている。「短気や精神不安定な状態になったら、悪化する前にすぐに手を打つこと」。
フォレンセ精神科センターのセルジオ・リゴナッチ精神科医は、「入院が本人にとって良いとは限らない。麻薬中毒患者の対処は患者によって違う。専門家の指示を得ることが大切」と締めくくった。