4月30日(水)
「二十年後の日系社会と日系人との連携事業について」公開討論会が二十六日(土)午前九時から、サンパウロ市ニッケイ・パラセ・ホテルで開催された。日系社会の活性化および、二十年後(一世代先)に日系人として誇りを持って活躍できるあり方を探る目的で、二・三世を中心とする有識者二十五人からなる調査委員会(續正剛委員長)が三カ月に渡って調査し、今回の討論会を主催した。当日はその報告をベースに活発な議論が行われ、(1)日伯情報管理センター(2)日伯複合医療機関(3)日伯教育センターの創設が提言された。二・三世層が二十年後の日系社会像を模索したものとして、注目される。
今回の調査を支援協力したJICAサンパウロ支所の小松雹玄支所長は開会あいさつの中で、日本では海外移住審議会が中心になって「国外における〃人的財産〃である日系社会と共に国際協力事業を行うにはどうしたらいいか」についての調査が進められており、今回の調査はそれに連動したものであると説明した。
二・三世を中心に約百三十人が公開討論会に参加し、討議・報告はほぼ全てポ語のみで行われた。小林パウロ下議、野村丈吾元下議、渡部和夫元サンパウロ州高等裁判所判事、藤田エジムンド伯外務省アジア太平洋局長、横田パウロ元中央銀行理事など、そうそうたるメンバーが会場に顔をそろえた。
同調査委員会の委員長は續正剛・元保健大臣、副委員長には上原幸啓USP教授(文協会長)。大学教授陣二・三世が中心になって、保健衛生班、政治・社会・経済班、科学技術班、文化教育班に別れ、それぞれに日系社会の果たしてきた役割を分析・総括し、日系社会を活性化するプロジェクトをまとめた。
九時半から一時間かけて、同委員会コーディネータの仁井山進氏(サンパウロ州建設協会専務理事)により、ポ語で百十ページある報告の概略説明が行われた。
「日系社会は過去において日伯関係の〃かけ橋〃であり、二十年後にもそうありつづける」と結論した上で、活性化のために三種類の施設創設が提言された。
【日伯統合連携情報管理センター】非営利・非政府組織で、日伯関係に関するあらゆる情報を集めたセンター。日伯の保健・教育・レジャー・文化・科学技術・農業・社会・経済・政治に関わる調査、情報の収集。最新情報機器を駆使して、膨大なデータベースを作成し、日伯関係円滑化を促進する機関。
【日伯複合医療機関】アインシュタイン病院(ユダヤ系)、オズワルド・クルース病院(ドイツ系)、ポルトゲーザ病院(ポルトガル系)に匹敵するような、従来の日系病院とは異なる、大規模日系医療機関。
【日伯教育センター】バイリンガル初等教育施設(日語・ポ語)。ブラジルに最も必要とされる、貧困層への質の高い初等教育の提供を目指し、教育者の援助や教育機材の提供をする。
十一時からの討論会では、活発な質疑応答が行われた。討議内容は五月七日の会議で最終版報告書に反映される。ポ語版の報告書は日系人研究者協会サイト(www.sbpn.org.br/debate01.html/)に全文掲載されている。
最終版報告書は五月中に日本語翻訳され、七月には日本の関係各機関や省庁に送られる。希望者には配布されるので、JICAサンパウロ支所(011・251・2655)まで連絡を。