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ヒトゲノム 解読で伯チーム活躍=伯医学界に新時代=遺伝子治療に大きな期待=難病根治が実現へ

4月16日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】ブラジルをはじめ六カ国の国際研究班による人体の遺伝子解読が完了して十三日、細胞に遺伝子は三万三千個あり構成する化学物質(塩基)は三十一億対から成り立っていると代表が発表した。ブラジル・チームは、サンパウロ州研究支援財団(FAPESP)の資金援助のもとに行っていた乳癌の細胞遺伝子に関する解読資料を提供した。この快挙は、医学に新時代の到来を呼ぶとされている。
 ブラジルと日、米、仏、独、中、六カ国の国際研究班は、インターネットで連絡を取り合い〃生命の書〃と呼ばれる人体の機能が入力されている遺伝子の解読作業を行ってきた。
 人体の遺伝子解読は、他に米系のセレラ・ゲノミックス社が二〇〇〇年六月、九七%解読完了とし、遺伝子の数は予想より少ない三万個であると発表した経緯がある。国際研究はそれより三年後、さらに高精度の解読を遂行した。
 ブラジルが提供した資料は、質量共に米国に次ぐものであったという。この偉業が直ちに医学へ画期的変革をもたらすのではないが、生命の神秘を解明する入口に立ったといえそうだ。当国の医学界と生物学界も、ヒトゲノムの解読完了で新時代の幕開けをした。
 ブラジル医学界は乳癌の研究で、遺伝子に異常が生じると生命活動を司る蛋白質に影響して、細胞に異常が起こり生物を病的状態に進展させることが分かっていた。遺伝子異常と病気との関連で、病気の原因となった遺伝子の解明が急がれていた。 
 病気に関係する遺伝子の検索は大変な作業だが、それが判明すると個人の遺伝子異常を探すのは簡単な作業とされる。遺伝子の数だけ遺伝性疾患があるといわれてきたが、遺伝子数が三万三千個と判明したいま、正常遺伝子と異常遺伝子の範囲も狭められ、遺伝子に内蔵されている情報の読み取り作業は簡略されたと、サンパウロ大学(USP)医学部のマヤナ・ザッツ教授は語った。
 USPの医学部が取り組んでいる遺伝子治療は、機能蛋白を生産している遺伝子に異変が生じて細胞に異常が生じたとき、患部に正常遺伝子を注入して細胞を正常状態に取り戻そうという遺伝子置換方式だ。 
 これから三万三千個の遺伝子各個について、分子構造の中で遺伝的性質を支配し、人体をコントロールする記号または情報を解明する。この作業が遺伝子治療で、内科の診断と医療に革命をもたらすとされる。 
 分子医学の分野でも、癌細胞の発生過程や糖尿病、白血病など遺伝性疾患の遺伝子検索、罹患し易い根治困難な病気の治療などは、理論的に遺伝子治療以外に根治の方法がないので遺伝子解読で新しい道が開かれると期待されている。