4月15日(火)
広島地裁で係争中の「在ブラジル被爆者裁判」を担当している足立修一弁護士が来伯、在ブラジル原爆被爆者協会(森田隆会長)主催の懇談会が十二日正午から、サンパウロ市サウーデ区の同協会事務所で開かれた。約二十人が出席、足立弁護士より裁判の経過などについて説明を受けた。
森田会長ら十人が、健康管理手当ての支給などを求め、国と広島県を相手取って起こした訴訟は、今月二十三日に広島地裁で和解協議が開かれる。
被告側は手当ての支給を認めたものの、九七年十二月以前の未払い分は、地方自治法により時効にかかると主張。時効についての解釈が最大の焦点となる。
足立弁護士は、「国が誤った解釈をしておきながら、時効を持ち出すのはおかしい」と、和解には応じず、判決を待つ考えであることを明らかにした。
被爆者手帳の交付申請、手当ての受給申請、医療機関での診断、治療を居住国で可能にしたいとの希望が念頭にある。
国は渡日治療を主体にした支援事業を昨年から開始するなど態度を軟化。在韓被爆者が起こした訴訟の控訴審判決(〇二年十二月)を受け、「海外に被爆者がいることを認めた」。
だが、先ごろ公布された省令はやはり、渡日を前提とした内容。「裁判で敗訴した事項しか義務を履行しない」と、国の政策が満足いく水準に達していないと判断した。
裁判を続ければ、判決が出るのは来年以降にずれこむ恐れもある。高齢化の進む被爆者は一刻も早く、決着をつけたいところだ。
森田会長は、厚生省(現厚生労働省)が海外に在住する被爆者には被爆者援護法を適用しない旨の通達を出した七四年以後の補償を求めて提訴したらどうかと、提案。数人が賛同した。
足立弁護士は、七四年以後の手当てを累算すれば一人当たり六百万円から七百万円に上るため、勝訴する可能性は低く、謝罪の意という名目で金銭を出させるほうが現実的だとの見解を述べた。
森田会長ら六人は陳情団を結成。足立弁護士とともに、十三日、日本に向けて発った。訪日中に、和解協議に出席するほか、坂口力厚生労働大臣と会談、直接、窮状を訴える。
来伯に先立って、足立弁護士は訪米。サンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークで、被爆者のほか、弁護士や現地有力者と懇談、アメリカ政府に賠償金を求めて提訴することの可否を検討した。
地域によって温度差があったり、国民の理解が得にくいなど、難点はあるものの、前向きに取り組んでいく考え。ブラジル側も支援をする。