ホーム | 日系社会ニュース | 散歩中の日系女性 自転車に追突され死亡=週末 アクリマソン公園の悲劇=公園事務局は打つ手なし

散歩中の日系女性 自転車に追突され死亡=週末 アクリマソン公園の悲劇=公園事務局は打つ手なし

4月10日(木)

 日系人も多く利用するサンパウロ市アクリマソン公園での悲劇―。週末の来園者は延べ五千人を数えるこの公園で、先月二十九日午後、子供と散歩を楽しんでいた浅路ネウザさん(四七)が背後から自転車に追突され、二日に死亡した。戦前から様々な日系行事に利用され、日系人とのゆかりの深いこの場所での不条理な事件。自転車乗り入れ禁止のこの公園で、なぜこのような事件が起こったのか。公園の管理事務所に事件の詳細と今後の対応を聞いた。

 午後四時ごろ、アクリマソン公園内の坂道を駆け降りてきた自転車が、七歳の息子と歩いていた浅路さんに追突、自転車に乗った若者はそのまま逃走した。転倒し頭部に損傷を負った浅路さんは、病院に運ばれたが四日後の今月二日に亡くなった。
 五つある公園の出入り口には『自転車乗り入れ禁止』の注意書が掲げられている。しかし、その入り口の扉は開け放たれており、何の効果もない。
 この公園は、ジョギングや散歩を楽しむ市民の憩いの場となっている。中央にある池に囲まれた周囲にはジョギングコースが設けられ、老若男女を問わず、運動を楽しむ平和な光景が日常的に見られる。その人々の隣を自転車に乗った若者が通り過ぎる。それもまた、残念ながら〃日常〃の光景だ。
 管理所のナンシー・アイダール・デ・メーロ所長は「昨年の六月にこの管理事務所に勤務になってから、幾度も市の環境局に安全対策についての交渉をしてきたが、予算がないの一点張りだった」と説明し、「各門に一人の門番、もしくは入り口になんらかの障害物を設置するように申請を重ねてきた」と書類を見せる。
 その矢先に今回の事件が起こった。「残念ですー」と繰り返す彼女に今後の対応を聞くと、意外な答えが帰ってきた。
 今件における管理不行き届きということなのか、安全対策申請を行う彼女に当局が疎ましさを感じてなのか、彼女は八日付の官報で異動を命じられていた。
 公園警備を担当する軍警シウマラ・ソダドウ巡査は「自転車で乗り入れる利用者には注意しているが、何の強制力もないし、門から立ち入れないようにしても、他の門から入ってしまえば同じこと」と説明する。まさにいたちごっこで対応の仕様がない状態だという。
 事件が起きた現場の坂道には現在、鎖がかけられているが、いかにも取ってつけたような対応に見える。実際、公園を一回りする間にも二台の自転車が通り過ぎ、首輪を外した犬やローラースケートで走り抜ける若い女性に出会った。
 毎朝公園を散歩しているという六十代の日系男性は「このような事故が起こるなんてこれから安心して利用できない。市の管理体制はどうなっているのか」と憤りを隠さない。
 事故を起こした若者はつかまらず、当局はとってつけたような対応に終始するのみ。いつ誰が犠牲者になってもおかしくない。何らかの根本的な対策が求められている。