4月5日(土)
サンパウロ日伯援護協会(和井武一会長)の特別養護老人施設「あけぼのホーム」が開所三年となった。援協の施設のなかで、もっとも手のかかる人たちを世話しているところだ。入居者三十三人、職員三十九人(二〇〇二年末報告)にみるように、世話する人たちのほうが多い。援協は、さきに二〇〇二年度事業・決算報告、二〇〇三年度予算案(既報)・事業計画をまとめたが、あけぼのホームの報告のなかにショッキングな(衝撃的な)記述があった。赤裸々だった。「入居者介護に関する特記事項」である。入居者の食事時の状況――明るく報告はしたが、実態はたいへんだ。
――ホーム開所以来、食事の時間は介助をする職員を除き、入居者も職員もみんな一緒に、同じ食堂で食べていたが、なかには食事中大きな声で歌い出す人、ヒステリックな声で叫び声をあげる人、ひっきりなしに手を叩く人、大声で怒鳴り散らす人、などがあり、ほかの人たちから落ち着いて食事ができない、という苦情が出てきた。
そのため、食事を二回に分けることにした。食事は三十分、カフェは十五分ずらすわけである。初めの組は他人の迷惑を自覚できる人、あとの組はいわば傍若無人組。
お陰で大きな声を出さないように職員が気を使う必要がなくなり、あとの組はやりたい放題、その食事時間はまことに賑やかなものである。
報告の結びは「ホームではいろいろな障害を持った人たちが一生懸命生きている。それは、一見して無残な姿と移るかもしれない。いまは退去したある入居者が言った。『人間の老後がこんなにみじめなものとは思わなかった。私は、自分の孫にこのホームは見せたくない』と。
しかし、私たち(職員)は思う。一人でも多くの人たちにこのホームを見てもらいたい、と。そして、ホームのお年寄りから多くのことを学び取ってほしい、と。『老年は中年の延長』といわれる。『中年の生き方が老後を決める』ともいわれる。老後はだれにでも巡ってくる」。
報告書の入居者三十三人(日本国籍二十九人、ブラジル国籍四人)の「健康状態」の記述により、「特別養護」が必要だという実態が浮かび上がってくる。(算用数字は人数)
[一、歩行]車椅子19、歩行器2、杖4、歩行介助2、自立6。
[二、摂食]全面介助4、一部介助3、自立26。
[三、食事献立]普通食17、糖尿食7、きざみ食4、流動食5。
[四、おしめ]使用23。 [五、症状]半身不随4、目がみえない2、話ができない2、精神障害2、耳が極めて遠い5、痴呆随分進行している3、幾分進行している15、明晰15。