3月21日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】ルーラ大統領は二十日、米政府の対イラク武力介入に対して、TVとラジオを通じて公式声明を世界へ向けて宣言した。大統領は外務省に対して、イラク戦後の国連の機構と役割はどう変化するのか、安保常任理事国の全面的支持のない軍事行動が国連機構に及ぼす影響について検討するように命じた。またポスト・フセインのイラク新政権についても、外交戦略の原案作成を求めた。
大統領はアナン国連事務総長を初め、ラテン・アメリカの全首脳へ電話をかけ、ブラジルは紛争の平和的解決の立場を固守することを伝えた。イラクが大量破壊兵器を使用した場合にのみ、軍事介入を支持するとしたフランスの発言にブラジルも準ずるとした。
外相は、イラクの同兵器所有を極めて疑問だと語った。イラクの大量破壊兵器の所有の有無に関わらず、ブラジルは武力紛争に関与したくないのが政府の本音だと、外相が述べた。
イラク紛争で生物兵器が使用され、中東滞在のブラジル人も感染の疑いが持たれるまま帰国する場合に備え、各州に受け入れ態勢を備えた病院を配備する計画が立てられている。
ドンナ・リナック駐伯米大使は終日、米友好国や同盟国へ米国の立場理解を求めて、「イラク攻撃は熟慮の末の結論であり、サダム・フセインは人類の恐怖」と米の外交戦略を展開した。
リオデジャネイロでは学生五百人が、米大使館へ向けて「ブッシュはヒトラーの再来」「米帝国主義」などのプラカードを掲げて行進した。大使館前では、星条旗を焼き捨て、「米テロリスト」と罵った。 紛争が短期終了しイラクに新政権が誕生すると、ブラジルの油田開発への国際資本が、イラクへ向けられると関係者はみている。ブラジルへの開発投資は、手続きが複雑で認可がのろく、関係官庁はうるさく、投資家の間で評判が悪い。
イラク攻撃で油井が爆撃されなければイラクの日量二百五十万バレルは、新政権で三百五十万バレルに増量可能と関係者がみている。しかし、イラク新政権が世界各国から承認されるには、フセイン政権と油田開発契約を交わした国々がイラク攻撃に反対したため、契約書の有効化手続きなどで少し時間がかかるようだ。