3月20日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】米政府の対イラク武力行使に抗議してルーラ大統領は十八日、世界への影響も弁えず独善主義で行動する権利はないとして、ブッシュ政権の国連無視を激しく非難した。「米政府は、イラクへの武力介入で米国内問題をすり替えようとしている。世界平和のためにイラクの大量破壊兵器廃絶は世界各国の問題であって、前後の見境もなく米国が独断先行するのは納得できない」と大統領は批判した。
TVを通じて行われたブッシュ大統領の対イラク最後通告についてルーラ大統領は、「国連の立場は、今後どうなるのか。安全保障理事会はいったい何なのか。これから世界は、どう反応するか。残る二十四時間以内に攻撃中止に向けた何かが起きることを祈る。平和は人類発展の不可欠条件だ」と声明した。
大統領は十八日夜、国連のアナン事務総長に電話してイラク攻撃が避けられない事態に突入したことを確認した。大統領は平和を望む国民と国会の意向を代弁
したとして、武力介入か平和解決かの決断を下すのは国連であって、米政府ではないことを強調した。
メルコスール加盟国もイラクの核兵器問題は国連に一任することで一致した。アモリン外相は、「世界は唖然として固唾を飲んでいる。国連もブラジル政府も、今のところ打つ手はなさそうだ」と慨嘆した。
米政府に諌言したことでブラジル政府は、何らかの報復措置を受けることと予想されるが覚悟はできていると外相が述べた。南北アメリカ大陸に民主主義が根付くため、ブラジルは協力の用意がある。しかし、伯米政府間の考え方の相違があまりに大きいので、米政府に物を申すと外相は腹を据えている。
外務省は、中近東に滞在するブラジル人へ退避勧告を出した。大使館の記録では、イラク国内には二重国籍の四人のみとなっている。他にイスラエルに八千人、レバノンに六千五百人、シリアに一千人、ヨルダンに六百人など全員で一万六千人が同地方に滞在している。空軍は、空軍機二機を待機させ中近東滞在のブラジル人避難のため、外務省の要請を待っている。