ホーム | ブラジル国内ニュース(アーカイブ) | 死に急ぐ組織の少年「兵士」=麻薬抗争の犠牲に=「死ぬ時は死ぬ」と割り切り

死に急ぐ組織の少年「兵士」=麻薬抗争の犠牲に=「死ぬ時は死ぬ」と割り切り

3月14日(金)

 【フォーリャ・ティーン誌十日】リオのラップ音楽家のMVビル氏(二八)とプロデューサーのセウソ・アタイーデ氏(四〇)は、各州の麻薬組織に関わる十六人の少年たちのドキュメンタリー映画『ファウコン』の製作に携わってきた。二年余り経った今、出演した十六人のうち生き残ったのはたった一人。全員十三歳から十八歳までのいたいけな少年ばかりだ。
 警察やライバル組織、自分自身が置かれた状況と戦い続ける少年たちにとって、カーニバル前にリオで起こった騒動は日常茶飯事だ。ぞうりにTシャツ、ベルムーダとラフな服装に小銃、ピストル、ライフルと重装備。こうして麻薬組織の前線に立つ少年兵士たちをファウコン(鷹)と呼ぶ。
 麻薬組織の首領格は麻薬密売所の持ち主。麻薬卸売り業者と交渉し麻薬を購買。また兵士が使う武器も仕入れる。その下で総幹部役が密売所の管理を行う。そして兵士担当、兵士がくる。
 フォーリャ・ティーン誌は、この映画の製作を取材してきた。殺害された十五人の少年たちにもインタビュー。子供たちが麻薬組織に入る理由は、洋服を買いたい、子供を養っている少年の場合は家を購入したいなど、それぞれ目的は異なるにせよ、「金が必要だった」。少年たちのひと月当たりの手当ては約一千五百レアル。仕事は交代制で、麻薬密売所で麻薬を売る。
 少年たちは、銃撃戦を怖いと思わないのだろうか。意外を「死ぬときは死ぬ」と割り切っている少年が多い。麻薬組織の仕事を好きだという少年が多く、道徳教育がまだ十分でない年少時期に組織に入った子供ほど、殺人をなんとも思わない。むしろ面白いという。
 「中流階層の人間が持つものを自分たちも欲しいから強盗するんだ。時計はいくらでも買える。車だって保険があるじゃないか。なのに相手は抵抗する。だから俺たちは殺す。貧しくなければみな強盗をしたりしない」とL少年は語る。
 自称「兵士」の少年たちの中には、これからも麻薬組織で働くという者もいれば、「ほかにいい仕事があったらそっちを選ぶ」という者もいた。「いい仕事があっても虫けらのように扱われるのなら、人情の厚い麻薬組織に残る」という少年も。
 麻薬組織の連中はみな悪い人間ばかりだと思われていると言うと、「自分たちを悪く扱う奴らには悪者になる。でも貧民街の住民のように、自分たちにいい奴を悪くは扱わない。俺たちにだって心はあるんだ」と少年たちは言い返した。「俺たちはみな神を信じてる。例え神が殺人はダメだといっても、やらなくちゃならない」と言い残した十五人の少年たちはみな死んでいった。
 唯一生き残ったA少年(一九)は、初めのインタビュー当時から「組織から手を引きたい」と、真剣に記者に語っていた。麻薬中毒で彼の体はやせ細っていた。今では仕事を見つけ、体格も良くなった。「組織から出てよかった。もうおふくろを泣かせたくなかった」と振り返った。