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日伯学園構想に関する報告と提言(2)=日系の〝根〟問い直し=多文化共生国家 新文化形成へ貢献

3月12日(水)

【建学理念をめぐって】

 「日伯学園構想に関する報告と提言」はその中で、学園の建学理念を次のように表現している。

――日本ブラジル両国の教育文化の交流を通じて相互理解を推進する中で、ブラジル社会への日本文化普及を図るとともに多文化が共生するブラジルの良き伝統を吸収し、テクノロジーの進歩により緊密化した世界の平和と繁栄に貢献しうる、国際社会に有為な人材を育成することが本学園の目的であり、建学の精神もここにある――

 何のために日伯学園を作るのか。検討委がたどり着いた答えが「ブラジル社会への日本文化普及」であり、「人材の育成」だった。報告書はこの結論に至る道筋を、ブラジルにおける日本移民の歴史を辿りながら説明していく。
 ブラジルへの日本移民開始から今年で九五年。言語、文化の異なる異国の地で、日本移民は長年にわたって日本人としての意識を育んできた。一九一五年に創立された大正小学校はそうした努力の結晶でもある。
 その日系コロニアを第二次世界大戦が襲う。故国日本との国交断絶と敗戦。戦後の勝ち負け抗争は、当時思春期を迎えていた多くの二世たちを日本文化から遠ざけ、コロニアの内部に大きな断絶をもたらす結果となった。
 そして現在。こうした歴史を経ながらも、現在に至るまで日伯学園構想は繰り返し語られてきた。そこには、「自らの出自、民族的〝根(ルーツ)〟」を問い直そうとする移民の心情があると報告書は分析する。そして今回の構想で「ブラジル社会への日本文化普及」という新たな視点を打ち出した。
 これまでの学園構想は、日本語、日本文化教育を通じたコロニアの後継者育成という視点から語られることが多かった。報告書はその背景に、混血化の進行による人種的アイデンティティの喪失、コロニアの消滅を危惧する一世世代の思いがあると指摘する。そしてそこに、二世以降の世代との意識のずれが存在する。
 ポルトガル語に不自由せず、ブラジル社会を足場に活動する二世以降の世代が持つ日本文化への意識は、一世のそれとはおのずと異なってくる。報告書はその点を認め、むしろそこを出発点にして今後の議論を進めていく必要があると強調している。

 
 移民大国ブラジル。この国には数十に上る外国移民社会がそれぞれのコミュニティを形成している。日系コミュニティもその一つとして、伝えうる日本人の美質を伝え、ブラジル国家の新しい文化ッ形成に貢献する。その一方で多民族が共存する社会の中で広い国際感覚を身につけた人材を育成していく。
 「多文化共生社会ブラジルにおける日本文化」。報告書はここに日伯学園の存在意義を見出そうとしていると言える。 (つづく)

■日伯学園構想に関する報告と提言(1)=一世世代最後の貢献=百年後に残る構想を

■日伯学園構想に関する報告と提言(2)=日系の〝根〟問い直し=多文化共生国家 新文化形成へ貢献 

■日伯学園構想に関する報告と提言(3)=コレジオか大学か=新たに「総合大学」構想 

■日伯学園構想に関する報告と提言(終)=支援センター設立を=ネットワークで全伯つなぐ