先週、東京で開かれた「在日ブラジル人に係る諸問題に関するシンポジウム」は関心を寄せる人々で満員だった〈本紙東京支社発〉という。外務省(中南米局)主催の企画としては近来にないヒットといえよう▼いかにも堅苦しい「表題」に映るが、言ってみれば今日問題化している「出稼ぎシンポ」のことである。当地から植木茂彬元鉱山動力相、渡部和夫サンパウロ大学教授、二宮正人同教授が出席、講演している。過去に例のない人選を試みた外務省の確かな目は鋭い。やる気十分の心構えが伝わってくる▼当日、群馬県大泉町・長谷川町長が「本音でいえば選挙に回っているとき、これ以上日系人を増やさないでほしい、という地域の叫びが根強かった。これが実態だ」と報告した。対して二宮教授は『ブラジル人は日本に行きたくて大泉町を選んだのではなく、上毛促進雇用協議会の人が来伯、人材を募った』などを指摘、『今ごろになって住民感情云々とは……』と疑問点を衝いた。当然である▼出稼ぎ者の多くは3K(きつい、汚ない、危険)の仕事に就かされた。日本の若い世代に嫌われ敬遠された職種だ。不況になった今、住民感情がどうのというのは勝手過ぎやしないか。文化風土の違いはあっても人間対人間、対等の意識を育てあげないことには何ごとも前に進むまい▼今回の二宮発言は出稼ぎ者と知己、家族を含む日系コミュニテイの切実な声を代弁したといえる。言うべきことはちゃんと言うことだ。 (田)
03/02/26