2月1日(土)
「命」「幸福」「友情」「成功」・・・リベルダーデ区に限らず、また日系人、非日系人にかかわらず、ペンダントやTシャツ、インテリアや入れ墨などに、漢字をはじめとする日本の文字を使っている人を見かけるのは、珍しくない。この一種の「漢字ブーム」とも言える現象は、なぜ、いつ頃から、誰によって、どんな人達の間で起こっているのだろうか。また、日本人にとっては普通すぎて気づかない日本の文字の魅力とは何なのか、日本人が知らず知らずに身につけている文字に対する考え方とはどんなものなのか。漢字入りTシャツを製造、販売している業者、頼まれて漢字を書く日本人、日本語教師、書道指導者などからの話をもとに、現象の核心に迫った。
東洋的なデザインをあしらった衣類を生産、販売している企業「ジャパン・ソサエティ」は、一九八九年から二〇〇三年までの間に、サンパウロ市内に四店舗、サントアンドレーに三つ、他にもインダイアトゥーバとモジ・ダス・クルーゼスに一つずつ店を開けた。経営は自己資本による堅実なもの。年率一〇%の業績向上を目指しているというが、代表のタルシーゾ・正勝・中島さん(五六)によると、二〇〇一年には約二〇%、〇二年には少なくとも一五%の向上を実現している。
このところは一年に一店舗の割合で、販売拠点を増やしている。〇二年は四十一のイベント会場で商品を販売した。リオデジャネイロでの売れ行きが良かったとのことで、今年はリオ開店を目指している。
エリザベス・ミツエ・タケシロさんとルシア・アキコ・タカモリさんが共同で経営する会社〃KEROPPI〃は、顧客の多くが日系人。日本的なデザインの子供用衣服も多く扱っている。
日系慈善団体のバザーに、手作りで出店していたのが始まりだった。「どんどん売れるから、会社にした」という。現在も、業績は年に一〇から一五%は向上している。エリザベスさんは「経済が悪い中でも売上は伸びている。漢字の人気が上がっているのは明らか」と話す。
街で見かける漢字Tシャツはこの二社の製品以外にも多くあるが、総じて見ると、漢字Tシャツの売れ行きは悪くないようだ。
ビラ・カロンでジーンズを作っている日系の業者は、ズボンに刺繍で「愛」「無限」「あいうえお」などの字を書いて売っていた。しかし、昨年で「もう流行が終わった」という。今は日本的なデザインの花の刺繍などを作っている。
流行の変化は早い。造形作家で漢字のデザインも手掛ける吉沢太さんは「中国風の漢字も増えて来ている。漢字などのブームは変化しながら続いている」と話す。
では、漢字に代表されるオリエンタルな商品の一体何が、消費者を引き付けているのだろう。(渡辺文隆記者)
■越境する日本文化 漢字(1)=Tシャツに書かれた=「命」「幸福」「友情」「成功」
■越境する日本文化 漢字(2)=日本の「経済的成功」と「神秘」=漢字Tシャツの魅力
■越境する日本文化 漢字(3)=日本の美しさ伝える=Tシャツの 文字はメッセージ