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ルーラの「切り札」=具志堅長官の実像に迫る=ヴェージャ誌 最近の動向や経歴

1月31日(金)

 ルーラの切り札――。そんな大見出しで二十九日付ヴェージャ誌は、具志堅ルイス大統領府広報長官の最近の動向から経歴までを、三ページを割いて紹介している。写真説明には「具志堅は大統領を自由に批判できる唯一の大臣」とのゴシック字が躍る。なみいる大臣を押し分けて同誌が異例の扱いをしているのは、新政権の目玉政策《飢餓ゼロ》が早々に暗礁に乗り上げていたのを、〃大統領の名において〃具志堅長官がてこ入れを行ったなどの最近の動向(二十三日付本紙二面に詳細)が注目されたからだ。大統領との関係などを中心に、以下、記事を抜粋して紹介する。

 具志堅氏は大統領と最も絆の深い大臣だ。二人は軍事政権時代、活動家として警察に拘留されていた時も、隣部屋同士だった。具志堅氏はサンパウロ州銀行労組の最左翼として、ブラジルの組合運動家の中で、最も勇敢な一人だった。
 一九八五年には彼がリーダーになって、七十万銀行組合員がストを強行した。コンピューター以前の時代であり、このストは国の経済を麻痺させた。サンパウロ州銀行労組はこの時、世界最強労組の一つに仲間入りした。
 理論的には、ルーラが率いていたABC地区金属労組と力を合わせることで、全国的な組織力を作りあげられるのは――。その発想が萌芽となって、現在のCUT(統一労組)が生まれた。
 カルドーゾ政権時代には、社会保障改革案の主要プランに反対の大論陣を張ってきたが、最近は〃PT Light〃(労働者党穏健派)のリーダーの一人になった。前政権時に掲げた改革案の大半を引っ込めたのだ。
 この二年間は健康問題に悩まされた。二〇〇一年十月には心筋梗塞に襲われ、その数カ月後にはガンにかかっていることを告知された。二〇〇二年二月に手術し、胃を全部切り取った。手術後、敗血症に罹り、死線をさまよった。一連の手術のせいで、行動に大幅な制限がある。例えば、二時間ごとに少しづつ食事をしなければならないとか、頻繁にトイレに行かなくてはならないとか、飛行機などで移動する際には、大変な負担になる。
 昨年の大統領選挙で副コーディネータを務めたとき、ルーラは彼のために、党が特別態勢を組むように命じた。選挙対策本部の二区画先に、特別にアパートを借り、看護婦と運転手を契約したのだ。
 現在、具志堅氏は妻エリザベッチさんをなくして、医者が要求する行動制限を守ることは不可能だと考えている。だから、サンパウロ州インダイアトゥーバ市の自宅から、近々ブラジリアへ家族で引越しをする。彼には十九歳の長男を頭に三人の子どもがいる。
 元・無神論者の具志堅氏は、宗教哲学マニアでもある。時間も忘れてカバラ(ユダヤ教の神秘的解釈法)のことを語ったり、禅宗とチベット仏教の違いを議論したり、ブラジルで二種類出版されているコーランの翻訳の違いを説明してもらうために専門家を探しまわったりもした。息子たちと妻は、ペルシアに起源をもち、人類が一つの地球社会に融合されることを説く〃バハイ信教〃を信仰する。教えは賞賛するが、本人は信者ではない。
 この十年間、大臣の家族は興味深い習慣を守ってきた。毎週日曜朝八時に家族全員顔を合わせ、祈りを唱えた後、お互いの計画や問題点を語りあってきた。家長・具志堅氏はまさに同じことを平日に、ブラジリアで行っている。連邦共和国の名のもとに――。