1月10日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙六日】クローン人間の是非が議論の的となっているため、死滅した人体臓器の再生に役立つ細胞核の研究が頓挫の憂き目にさらされている。クローン人間と細胞核の研究は倫理感の相違のみだが、部外者によっては同一問題と誤解されていると関係者が訴えている。今年の課題として細胞核の研究が合法化されるなら、今まで不治とされた多くの難病治療が可能なことで、一縷の望みとして患者と家族からその解禁が期待されている。
クローン人間は研究成果が不完全なまま結果として一人の人格を創ってしまうのだが、細胞核は細胞分裂が始まった段階で臓器別に分類し保管するというもの。受精子は、どの段階から人格と見なすかで意見が別れている。現行法は受精した段階で一人の人格として神聖視し、人はそれを犯してはならないとしている。
細胞核の応用は現在、出産時のへその緒から採集した細胞核の血液を骨髄の代用に使用して白血病などの治療に役立てている。へその緒から採集した細胞核血液は、凍結すると十五年間も保存ができ、人体のどの臓器細胞をも形成する。この方法はブラジルを初め、世界各国で実用化されているが量的に限度があり、一般向けには程遠い。
精子と卵子を人工受精させると細胞核が誕生し、さらに細胞分裂が始まる。分裂した各細胞核は、それぞれの臓器を形成する。臓器を形成する前の細胞核を臓器別と繊維質別に分類して、細胞核銀行で保管する計画がある。この細胞核を患者の患部に注射すると、破損した臓器の再生が行える。
へその緒から採集した血液の細胞核銀行は、ブラジルではリオの国立癌センター(INCA)一カ所しかない。しかも提供者の善意に期待している。人工授精による細胞核を使用するなら、多くの重病患者を治療することができる。連邦令は人間の受精子の摘出を禁じているので、まだ計画だけで止まっている。
骨髄の移植は従来、大量の血液提供者と痛みを伴う大手術であったが、いまは細胞核の注射一本で済む簡単な手術となった。細胞核利用の法整備が行われれば、日進月歩の勢いで医療技術を進歩させるので今年の課題として医療関係者が打開策を論じている。