1月8日(水)
【中国新聞】在外被爆者支援策として広島、長崎両県が今月下旬から南米に派遣する医師団が、最も被爆者の多いブラジルでは健康診断をしないことが六日までに固まった。北米への医師団派遣も本年度は見送りの可能性が高い。いずれも国の在外被爆者支援策の一環だが、現地での治療を伴わない内容に在外被爆者団体が反発しているため。ブラジルでは、医師と被爆者との意見交換にとどまる。 南米を訪れるのは、広島鉄道病院(広島市東区)の柳田実郎部長ら医師二人と、広島、長崎県職員三人の計五人。二十三日から二月五日までブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ペルーを回る。うちブラジルでは、現地医療機関の視察や被爆者との意見交換などを予定し、他の四カ国のような被爆者の健康診断はしない。
在ブラジル原爆被爆者協会(森田隆会長)が健診の代わりに、その費用を基金創設に回し、現地での医療を要望しているため。現地法の関係で日本の医師が治療に当たることはできず、当初はブラジル抜きで訪問する計画もあったが、窓口の広島県と森田会長が協議し、「折衷案」での解決となった。森田会長は「せっかくだから、この機会にブラジルの被爆者の姿を通じ、現地での医療が必要な実情を知ってほしい」と話している。
厚生労働省によると南米には約百八十人の被爆者がいる。うち約百五十人がブラジル在住。広島県や県医師会などが独自の支援策として一九八五年から隔年で医師団を派遣し健康診断していた。
米国原爆被爆者協会(友沢光男会長)も同様に、現地治療のための基金創設などを求め国の支援策に反発している。
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医師団は二十四日にブラジルに到着。二十五日午後一時から、サンパウロ市ジャバクアラ通り一七四四番、在ブラジル原爆被爆者協会事務所で約四十人の被爆者を対象に健康管理講演会を開く。その後、被爆者行政に関する意見交換に入る。