前回に引き続き、サルバードルの旅。
見所が満載のサルバドールには多くの観光客が訪れるので、ところどころに観光案内所があります。そこでアフリカ起源の宗教儀式カンドンブレーの要素を取り入れたショーについて情報収集しようとしていたら、ショーではなく、一般にも公開されている本当のカンドンブレーの儀式をガイドの方と10人ほどの団体で見学するツアーがその日の夜あるとのこと。
カンドンブレーの儀式は、月に数回しか行われないので、めったにないチャンス!ガイドの方から事前に注意をされたのは、「黒い服は着てはいけない」とのこと。謎に包まれているので、多少不安に思いながらも、夜8時半の開始に間に合う様に出発し、団体で儀式が行われる場所へ。
住宅街を入って行くと現れたのは、真っ白な公民館の様な建物。そして真っ白でふわっとスカートが大きく膨らんだドレスを見にまとった女性が出入りしています。開始予定時刻になると、地元の信者の方々とともに建物の中へ入る様に案内されました。
入り口には、鳥の羽と土が撒かれ、薬草の様な香りが。天井からは、無数の白や金の短冊状の紙がぶら下がっています。
カンドンブレーとは、アフリカ密教を由来とする宗教で、アフリカ各地から奴隷として連れてこられた人々がブラジルで発展させたものです。カトリック改宗を強制される中、独自に育まれて来ました。カンドンブレーの儀式を通じて、神が降りてくると信じられています。
部屋に入ると、男性は右側、女性は左側に分かれて着席します。打楽器の演奏と歌が始まると、20人ほどの女性が出て来て、輪になって踊り始めました。静かでゆったりと、足や手でリズムを刻む感じの踊りです。曲が終わっても、次々とまた曲が始まります。踊り続ける信者たち。地元のこどもたちもいます。
歌い踊り続けること、およそ2時間。踊っている信者たちの様子に異変が。目を閉じて、何かつぶやいているように口元を動かし、身体が震えている人もいました。そして深いお辞儀をして、頭を床に付け、また立ち上がり、他の信者と抱擁して、また踊り続けます。これが神が降りて来ている状態ということなのでしょうか。
しばらくして、ほうれん草の束の様な葉っぱに包まれたマッシュポテト風の食べ物が振る舞われ、皆で食べました。1曲、終わってまた1曲。儀式は時間とともに益々熱を帯びてくるように見えました。
気付くと、11時過ぎ。儀式はまだまだ続くようでしたが、途中で退席しても大丈夫とのことだったので、私たちはここで失礼しました。なんとも神秘的で、貴重な体験でした。
そしてサルバドール滞在最終日、当初見に行こうとしていた、このカンドンブレーのダンスや、カポエラ、サルバドールスタイルのサンバすべてを取り入れたショーも見に行くことが出来ました。こちらのショーもとても素晴らしくエネルギッシュ。サルバドールの魅力がたっぷり詰まっていました。
カンドンブレーは写真撮影厳禁!ということで、こちらはコラムとは関係ありませんが、街で見つけたココナッツ型の公衆電話。
プロフィール
竹内 香苗(たけうち かなえ)。愛知県出身のフリーアナウンサー。約10年間過ごしたTBSでは『はなまるマーケット』『朝ズバッ!』などに出演。夫のブラジル赴任に伴い12年に同局を退社し、ホリプロに所属。同年11月よりサンパウロ市に滞在している。