4日未明、上下両院の合同本会議が、幾多の論議や攻防の末、基礎的収支の算出法変更案の基本部分を承認したと同日付各紙サイトが報じた。
同法案の承認は現在の連邦政府にとっての最優先事項で、大統領は同法案と連邦予算基本法(LDO)、来年度予算案の承認を議員割り当て金払い出しの条件にした。
議員割り当て金を餌にして議会を開催させ、自分達の望む内容の法案を可決させる方法は政府の常套手段で、連邦議会でも野党側からの批判が相次いだが、今回は基礎的収支算出法の変更に焦点を当てて説明したい。
基礎的収支(本来は基礎的財政収支またはプライマリー収支)は、税収や税外収入からなる歳入から、国債費(国債の元本返済や利子の支払いに当てられる費用)を除く歳出との収支で、その時点で必要とされる政策的経費をどの位、税収などで賄えているかを示す。
基礎的収支の計算は国債費を除いて行われるため、同収支の黒字額が小さかったり赤字になったりすれば、国債の利子の支払いや元金返済は不可能となり、新たな国債の発行も必要となる。新たな国債を発行すれば、当然の事ながら、翌年以降の利子支払額や返済しなければならない元金額が増える。
ブラジルの基礎的収支の状況は決してよいものではなく、今年の場合、現状では、年頭に掲げられた基礎的収支の黒字目標1160億レアルを達成するのは不可能で、下手をすると赤字で終る可能性もささやかれている。
もし、元金返済はおろか、利子さえ払えないという事になれば、ブラジルは国債を購入した人々への責任を果たせなかったという事になり、国際的な信用が失墜。それによって投資格付けが引き下げられれば、国内外からの投資が減る上、国債にまつわる利子支払いのための金利を引き上げる必要も生じる。
そこで、ジウマ政権が採った苦肉の策が、現行の算出法では一部しか除外出来ない経済活性化計画(PAC)にまつわる事業経費を全て歳出以外の項目に回すと共に、景気刺激策として導入した減税措置による税収の減額分を歳出から差し引くという案だ。
上下両院の合同本会議は4日未明、この案を基本的に承認。定数不足となったために修正案の審議は9日の本会議に持ち越されたが、基本案の承認により、今年の実質的な基礎的収支黒字目標額は100億レアルに削減された事になる。
現政権はLDOや公共部門における財政健全化のために2000年に制定された財政責任法(PRF)の責任を果たせず、基礎的収支の算出法を変えるという方法を繰り返しており、従来通りの算出法なら、数年前からブラジルの基礎的収支は赤字に陥っているという。