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3日、議会に押しかけたロボン(Laycer Tomaz/Câmara dos Deputados)
3日、議会に押しかけたロボン(Laycer Tomaz/Câmara dos Deputados)

反ジウマの場所にロボンあり=言いたい放題の名物ロック歌手

 大接戦に終わった大統領選挙が終わって1カ月あまりのブラジルでは、依然として野党陣営がジウマ政権に激しく楯突く姿がしばし見られる。12月も2、3日に、ジウマ政権側が提案した、基礎的収支の算出法の改定法案に対し、「年間目標が達成できないのはごまかせないぞ」とばかりに野党や抗議団体が議会前で激しい抗議を行い、話題となった。そして、その場所にも彼の姿があった。それはロック歌手、ロボン(57)だ。
 ロボンは、大統領選挙前後から、反ジウマ派キャンペーンの旗手としてマスコミの注目を浴びていた。選挙期間中は音楽家や俳優などによる反ジウマ派の集会を行い、「もしジウマが再選したら、俺はこの国を出て行く」とまで宣言した(結果は撤回)。そして、ジウマ大統領再選6日後の11月1日には、サンパウロのパウリスタ大通りで行われた、ジウマ大統領の再選を認めないデモに先頭に立って参加し、それも話題となった。
 ロボンは、ブラジルがロックブームに沸いた1980年代にソロのロック歌手としてデビュー。同じくロック歌手で今や大御所のルル・サントスの昔のバンド仲間だったなどの話題性も手伝い、当時、一番人気だったレジオン・ウルバーナやカズーサほどではなかったものの、それなりに売れていた。
 ロック歌手としての人気はその後、落ち着いてしまったが、公の場に出て本音で話すキャラクターで根強い人気を集めている。
 その発言の矛先は音楽業界に多く向けられ、先輩格の大御所であるカエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルに対しては、「最後にいい作品出したの、30年くらい前だろ」と言い、セルタネージャの人気者ルアン・サンタナに対しても、「あんなアイドルが売れると業界も終わりだ」などと発言しては物議を醸している。
 またロボンは、2010年に自伝「50アノス・ア・ミル」を著し、それを自らベストセラーにまで押し上げている。
 現在のロボンは、大統領選で敗れたアエシオ・ネーヴェス氏(民主社会党・PSDB)の熱心な支持者として知られているが、実はその昔はジウマ氏の労働者党(PT)の熱心な支持者だった。
 動画サイト、ユーチューブでは、80~90年代にかけて、彼が大統領になるかなり前のルーラ前大統領や、当時の党ナンバー2だったジョゼ・ジルセウ氏らと興奮気味に思いを語る姿が見られる。
 これに関しては、「これは日和見的な矛盾ではないか」との声もあがっているが、ロボンはPTを支持していた過去を「俺の黒歴史だ」と認めている。現在の彼は、PTは「腐敗しきった政党」で「反対者を排外する党」だとしている。
 もともとPTには、ロックを聴く人が従来好みがちな、反体制的で進歩的なイメージがあったことは事実だ。それはPTが元来、60~70年代に当時の軍事政権と戦った学生や労組が中心となって出来た党という歴史を考えれば無理からぬ話だ。そうした事情は、実際に軍政と戦ったシコ・ブアルキやジルベルト・ジルといった、ロボンの一世代上のリベラル派の歌手が、自分自身や親族がPT政権に絡むほど蜜であることにも現れている。
 ところが、そんなPTも、先述のジルセウ氏がメンサロン事件の主犯格として実刑判決を受け、現在もペトロブラスの汚職問題で渦中の存在にあるなど、党本来のイメージが過去のものになりつつある。
 ロボンの存在は、そんな国民の本音の裏返しなのかもしれない。