12月8日と言えばあのジョン・レノンの命日として世界的に有名で、ブラジルでも彼の「ハッピー・クリスマス」は今の時期、よく流れる。だが、この日はブラジルを代表する大作曲家、歌手のアントニオ・カルロス・ジョビンの命日でもある。今年はトム・ジョビンが亡くなって20回忌にあたる。
生前既に、数多くの作品を他人への提供曲や自らの作品として発表してきたジョビンだが、まだ正式な音源、映像として発表されていないものはかなり多く、それらのうちでかなり話題を集めそうな作品が、2015年には多く発表されることになりそうだという。
その作品の多くを握っているのは、元バンデイランテス局の会長をつとめていたロベルト・デ・オリヴェイラ氏だ。同氏は同局の番組ディレクターをつとめていた時、ジョビンの特別番組をいくつか制作しており、その一部は部分的に動画サイト、ユーチューブなどでも見られるが、これらの正式映像が発売されることになりそうだ。
その目玉となるのが、1974年に放送されたエリス・レジーナとの「エリス&トム」だ。同名のアルバムは、代表曲「三月の水」などを収録する「ブラジル音楽史上最高の名盤」にもしばしば選ばれており、その当時撮影されたレコーディング風景は、30分ほどの番組となって放送されているが、このノー・カット・ヴァージョンが初お目見えする模様だ。
また、このアルバムを発売した時のリオとサンパウロの発売記念コンサートの映像も録画されており、こちらの方も発売となりそうだ。
またロベルト氏は、94年にバンデイランテス局で放送したミルトン・ナシメントとの共演コンサートの番組も映像作品化するという。この企画は、体調の悪かったジョビンをロベルト氏が説得することで実現したもので、ゲストにはシコ・ブアルキなども参加している。ジョビンはこの番組の数カ月後にニューヨークに膀胱癌の手術を受けに行くが、その際に心臓発作を起こし、12月8日に亡くなっている。
また、音楽評論家のマルセロ・フロエス氏がグローボ局やレコード会社の倉庫を調べてみたところ、ジョビン関連の貴重な作品として、1991年のドリヴァル・カイーミとの共演コンサートや、ジョビンの1987年の60歳記念コンサート、シコ・ブアルキとの共演で1971年に世界歌謡祭参加曲として制作されたものの未発表曲になっていた「ケ・オラ・ソン」などがあるというが、これらの作品がいつ陽の目を浴びるかは現時点ではわからない。
また7日付エスタード紙の特集では、フロエス氏が1993年にビートルズのプロデューサー、ジョージ・マーティンとジョビンとのリオでの会食を取り持った際のエピソードを、写真つきで公表している。マーティンはこの時、自分たちのスタジオが災害に遭って壊れたが、新しいスタジオが間もなく完成すると言い、ジョビンは新しいレコードを録音しているところだと語った。ジョビンたちは再開を約束したが、その翌年ジョビンが亡くなり、95年にフロエス氏がロンドンを訪れた時にマーティンにジョビンのレコードを手渡したことなどが明かされている。
なお20回忌にあたる8日、代表曲「イパネマの娘」にちなみ、リオのイパネマ海岸に、ギターを抱えたジョビンの銅像がお披露目された。(7日付エスタード紙より)