「セルジオ・モーロ」の名に聞き覚えのある人も多いだろう。100億レアル(約4679億円)もの公金横領を暴いて今話題のペトロブラス(PB)疑惑を捜査するラバ・ジャット作戦の若き指揮官、クリチーバ連邦裁判所の判事だ。〃今年の国民的英雄〃とまで書く新聞もある▼パラナ州議会サイト11月17日付によれば、同判事はパラナ州マリンガ市生まれの41歳。同市の州立大学(UEM)法学部を卒業後、博士号をとり、ハーバード大学留学を経て、パラナ連邦大学教授も兼任。PB疑惑で〃必殺技〃となっている司法取引「減刑付き供述」の発祥の地米国で学んだ訳だ。03~07年に97人を違法送金で有罪にしたバネスタード事件で判事として頭角を現す。その97人の一人がPB疑惑の中心人物アルベルト・ユセフ被告で、10年越しの〃宿敵〃のような二人の関係だ▼与党連邦議員が今件を自分たちの根拠地ブラジリアへ移管しようとするのをひたすら拒み、いずれ首都に潜む巨悪を裁く段階になった時に突き付けるよう、「減刑付き供述」を駆使して圧倒的な証拠集めをしているように見える。その姿には、どこか孤高のヒーロー的雰囲気が漂う▼かと思えば政治批評サイト(www.conversaafiada.com.br)12月6日付に「モーロ判事の妻ロザンジェラは弁護士で、ベット・リッシャ州知事(PSDB)の補佐官と仕事をしている」との記述も気にかかる。最大野党PSDBといえばサンパウロ州、ミナス州が本拠地と見られがちだが、パラナ州もPSDB王国だ。だからクリチーバで証拠固めを―との政治力が裏で働いているのであれば、それはそれで不気味な動きだ。(深)