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魚屋さんの入り知恵=カジキの串カツ風

グルメクラブ

11月28日(金)

 「今月一杯が時期。試しにつまんでみてよ」
 リベルダーデで魚屋を営む三木宗三郎さんがそういってさばき始めたのはバショウカジキ。芭蕉=バナナに似た背ビレをもつことからそう呼ばれる魚だ。
 四属十二種いるカジキのなかでも筋が多くパサついているため、市場での評価は常に低く安物扱いされるが、どうしてどうして。
 サーモンピンク色した身はかみ締めるとかすかな酸味と旨みがあった。脂もしっかり乗っている。
 筋の方はまったく気にならなかった。頭部に近ければとくに問題ないそうだ。絶品なのは砂ずり腹の部分で「マグロやサーモンにも負けない」と三木さん。口の中で溶けるかのような味わいを保証する、という。
 俗にカジキマグロと呼ばれる赤身のマカジキ、ともするとマグロ類よりも高級視されるメカジキにはとても及ばないのがこのバショウカジキ。そんな見方が支配的だが、自分の舌で確認する価値はある。認識もいくらか改まるはず。
 カジキはポルトガル語で「Espadan」。剣のようなその角を言い当てている。漢字に魚偏がつかない魚としても知られ、梶木あるいは舵木と書く。どちらも船の材料のことで船板(加敷)や舵を角で突き通すことに由来する。
 ヘミングウェイの『老人と海』で老いた漁師が一人で四日間も戦い抜く相手がこのカジキだった。獰猛とされるが、調理においては手なづけやすい魚である。
 和食に洋食に料理方法は多い。刺身が一番だが三木さんの推薦は串カツ風に揚げるミラネーザ。またムニエルもいい。筋の多い部分でも小麦粉をまぶしバターで焼けば、「旨い」の一言に尽きるそうだ。