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パブ『伯剌西爾』=王室御用達?=パラチのカシャッサ

グルメクラブ

1月23日(金)

 エリザベス女王がパブ(大衆酒場)で堂々とお酒を飲む姿を写した有名な写真があって、時折グラビア誌なんかで見かけることがある。
 伝統的に英国王室は左党なようで、国民がこれにさしたる反感を抱いていないのは、懐が深いというか、文化というか。
 「王室御用達」のウイスキーもちゃんとある。ロイヤル・ロッホナガー、ロイヤル・ブラックラ、グレンユーリー・ロイヤルがそれである。この三本に限って、「ロイヤル」(王室)の冠を頂くことが許されている。
 チャールズ皇太子の愛飲の酒はしかし、ラフロイグだそうだ。世界各国の免税コーナーでもっとも売れている品のひとつであり、アイラ産モルトウイスキーの巨星と目される銘酒だ。その評価に比して値段はそう張らず、チャールズ皇太子は女性の好み以外の分野でも、案外庶民派と分かる。
 一八八九年まで王制が敷かれていたブラジルにも、やはり「王室御用達」のカシャッサなるものが存在したのだろうか。
 ドン・ペドロ一世は一八二二年、ブラジル王位就任をカシャッサで祝ったという。その後もブラジルの王侯貴族が宴席で真に好んだ酒はカシャッサだったと伝えられるから、確か「王室の一本」と称された品が過去にあったのだと信じる。
 元王族のなかには趣味が高じてか、商いのためか、後年、自分のファゼンダ内に蒸留所をこしらえたものも出てきた。ドン・ジョアン・マリア・デ・ブラガンサである。イザベラ皇女の孫に当たる。
 その手がける銘柄は「Mare・Alta」。リオ州パラチで二十年ほど前から生産に乗り出し、年間三万リットル前後作っている。
 かつて金の輸出港として栄えたパラチといえば風光明媚な観光地として知られるが、毎年八月に開かれる「フェスチヴァル・ダ・ピンガ」でも名高い。地酒を飲ませる祭りである。
 といっても、今日、そこで出会える「土地の酒」は六品だけとなった。かつて十八世紀には約二百の蒸留所が偏在し、甘い匂いを辺りに漂わせていたそうだが―。