グルメクラブ
4月2日(金)
セマーナ・サンタの期間中は「肉屋」でもタラの塩漬けが売られていたりする。日本の肉屋が例えば「土用丑の日」だからといってウナギで商売するだろうか。ブラジル人の臨機応変さ? をみる思いだ。
欧州はイタリア、スペイン、そしてドミニカ、メキシコなど南米大陸でもタラ料理は日常的なものである。イギリス、アイルランドの国民食として有名な「フィシュ・アンド・チップス」も「フィッシュ」は一般に「タラのフライ」。
だが、タラ料理の「本場」はやはりポルトガルだろう。庶民のタンパク源として長く重宝されてきた歴史がある。約五百年前にして既に現カナダ領のニューファンドランド島まで漁に出かけているというから筋金入りといっていい。
ブラジルのポルトガル料理店でもタラ料理の品数は注文にいささか迷うくらいである。「本場」の事情はどうだろうか。
「一年毎日違うタラ料理が食べられる」くらい種類が多いのだそうだ。コロッケからクリスマス用の手の込んだ伝統料理まで、その調理の幅はたいそう広い。
タラはこうしてポルトガルのみならず世界の「食卓」を支えているが、最近の地球温暖化で大西洋の水温が上昇、タラの捕獲量が減少している事実が明白になっている。長年、乱獲を続けてきたツケもある。減少どころか、「絶滅の危機」。そう本気で警鐘を鳴らす専門家もいる。
タラはいま確かに街中にあふれている、しかし、その塩漬けの白い骨身に、幸薄い将来が透けてみえるとすれば、われわれはふいに静かに「挽歌」を聞く。