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10日、涙ながらに演説を行ったジウマ大統領(Antonio Cruz/Agência Brasil)
10日、涙ながらに演説を行ったジウマ大統領(Antonio Cruz/Agência Brasil)

真相究明委員会=最終報告書を提出=死者・行方不明は400人超=軍には責任追及求める=ジウマは恩赦法改訂を否定

 全国真相究明委員会は10日、31カ月に及ぶ活動を終える前に、調査結果をまとめた最終報告書を提出した。これにより、軍事政権時代(1964~85年)の政治犯の死者や行方不明者、拷問などに関与した関係者の数も明らかとなった。同委員会は報告書において、政治犯の死亡・行方不明に関与したとして元大統領5人を含む377人の問題の責任を問うことを求めたが、自らも軍政時代に政治犯として逮捕された経験のあるジウマ大統領は、涙ながらに恩赦法見直しに否定的な姿勢を見せた。11日付伯字紙が報じている。

 12年5月に正式に活動をはじめた真相究明委員会は2年7カ月の間、1946~88年に起きた人権侵害の疑いのある事柄に関する調査を行い、軍事政権時代を中心に、1116件の証言を集め、4328頁に及ぶ報告書を作り上げた。10日の会見では、調査の最終的な統計と種々の勧告が発表された。
 それによると、対象期間中の政治犯の死者、行方不明者は434人で、うち軍政時代は423人だった。死者は191人で、33人については調査期間中に遺体が発見されたが、210人の行方は、現在も不明だ。
 調査期間中の非人道的行為(人権侵害)に加わったとされる国家機関の関係者の数は377人で、うち361人が軍政時代に集中していた。
 勧告事項の中には、軍部に対し「軍政時代の人権侵害に関する責任を再認識すること」が盛り込まれ、さらに軍部における教育内容の変更や拷問の撲滅などを求めた。
 この「377人の加害者に対する責任」という表現が処罰を意味するものであるならば、1979年に制定された「恩赦法」の改訂にもつながりかねないが、今回の報告では恩赦法改訂に関する具体的な言及はなされていない。恩赦法は政治犯と、政治犯に死や拷問をもたらした軍人らの双方に恩赦を与えており、政治犯側の関係者には不満の残るものだった。
 ただ、エスタード紙によると、全国真相究明委員会のメンバー6人のうち5人が、「過度の人権侵害が行われた場合は恩赦法を適用すべきではなく、この問題に関しては時効もない」という立場を取っているという。
 ジウマ大統領は会見の席上で涙も見せたが、「今回の調査は軍に仕返しをするために行ったものではない」とし、「民政復帰のために結ばれた政治的な協定の価値を評価するべきだ」と語った。同大統領は1971年に左翼活動家のひとりとして逮捕され、拷問を受けている。
 この問題に関し、軍部からの正式な意思の表明は行われていないが、エスタード紙によると、軍部は委員会が内部文書を閲覧するのを妨げようとするなどの障壁を設け、今回の調査は「ある特定のイデオロギーに基づいたものだ」として遺憾の意を示しているという。
 政治犯に被害をもたらした377人のうち、196人は今日も生存している。