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在りし日のセウソ・ダニエル氏(ウィキペディアより)
在りし日のセウソ・ダニエル氏(ウィキペディアより)

SA市長殺人事件=ソンブラ容疑者の裁判無効に=最高裁判事らの投票で=事件から12年で振り出しに=「計画首謀者説」は揺らぐか

 連邦最高裁は16日、2002年1月に起こった、大サンパウロ市圏サントアンドレ市長(当時)のセウソ・ダニエル氏(労働者党・PT)の殺人事件の首謀者と目された企業家のセルジオ・ゴメス・ダ・シウヴァ(通称・ソンブラ)容疑者の要請で、同事件に関して行われた裁判を無効とする判断を下した。「単なる誘拐殺人事件か、黒幕のいる政治事件か」で注目を集めた同事件の裁判は、発生12年で振り出しに戻る形となった。17日付伯字紙が報じている。

 今回の決定は、ソンブラ容疑者の弁護士からの要請に基づくもので、同事件でソンブラ氏が誘拐殺人の首謀者として裁かれることを一時的に差し止めるものだ。同弁護士によると、サンパウロ州イタペセリカ・ダ・セーラ地裁での裁判で判事がソンブラ容疑者側からの質問を認めなかったとして差し戻しを求めていた。
 この申し出に対する投票は連邦最高裁で16日に行われ、判事投票2対2の同点になったため、ソンブラ氏側の要求が認められた。賛成票を投じたのはマルコ・アウレーリオ・メロ判事、ディアス・トフォリ判事で、反対票はローザ・ウェバー判事とルイス・バローゾ判事だった。
 この事件は、02年1月18日に、ソンブラ氏とレストランでシュラスコを食べたダニエル氏がその帰りに誘拐され、2日後に遺体となって発見されたものだ。市警は通常の誘拐事件と見て、実行犯6人を逮捕した。
 だが、同年6月、ダニエル氏の遺族が、ダニエル氏が死ぬ前に市内で横行していた公共交通関連企業をめぐる贈収賄事件などの汚職解明に乗り出していたことを指摘。市の予算の一部や不正な方法で吸い上げられた金はPTの選挙資金に回されていたという。また、当時、ダニエル氏の補佐官だったジルベルト・カルヴァーリョ氏は、少なくとも120万レアルを当時のPT党首だったジョゼ・ジルセウ氏に渡したと、ダニエル氏の遺族の前で発言していた。
 これを受け、サンパウロ州検察局は政治的な事件として捜査を開始。ダニエル氏の遺体に拷問の跡もあったことなどから、2003年12月、実際に贈収賄工作の仕掛け人的存在だったソンブラ氏を、ダニエル氏殺害を計画した首謀者として起訴した。
 ジルセウ、カルヴァーリョの両氏は同事件との関係を否定。ジルセウ氏はその後、メンサロン事件の主犯として実刑判決を受けたが、カルヴァーリョ氏はルーラ政権で大統領秘書室長、ジウマ第一政権で大統領府総務長官をつとめている。
 同事件の裁判では、6人の誘拐実行犯が2010年と12年にそれぞれ18~24年の実刑判決を得、服役中だが、ソンブラ容疑者に関してはまだ刑が確定していない。16日の最高裁の決定でソンブラ容疑者には人身保護令が適用され、共犯者たちの裁判もやり直しとなる可能性がある。
 今回の最高裁の決定は同市での汚職に関する捜査を妨げるものではないが、「ソンブラ氏が暗殺を命じた」とのサンパウロ州検察局の仮説が今後どうなるか、注目される。