米国のオバマ大統領は17日、1961年以来断絶していたキューバとの国交を回復させるためのプロセスを開始することを宣言した。半世紀にもわたり、南米諸国にも多大な影響を与えてきた対立が終わりを迎えることになり、ブラジルへも少なからぬ影響を与えることになりそうだ。18日付伯字紙が報じている。
キューバは1959年に社会主義による革命政権を誕生させた後、農地改革で米国企業を接収したことで米国との関係を悪化させた。このとき、米国がキューバの最大の輸出品である砂糖の輸入を止めたことで、キューバがソ連に接近。東西冷戦中の最大の敵国に同国がなびいたことを受け、米国は1961年に国交を断絶し、翌62年には核戦争直前の状態にまで陥っていた。
その後、米国は南米へのキューバの影響を恐れ、これらの国が社会主義化することを防ぐべく、ブラジルを含め、南米諸国の右翼軍事政権を裏から支援した。だが、これらの軍事政権は80年代には終焉。98年のベネズエラでのウゴ・チャヴェス大統領による政権誕生以来、南米諸国にブラジルの労働者党(PT)政権を含む左翼政権が次々と誕生するなど、米国の当初の思惑とは逆の現象も生み出した。
だが、東西冷戦も終わり、キューバも社会主義を継続していく上で経済発展の観点上、他国からのインフラへの投資を求めはじめた。そのひとつに、ブラジルが社会経済開発銀行(BNDES)を通じて投資を行ったマリエル港の建設なども含まれる。同国は2011年には部分的に市場を開放しており、ブラジルも14年1~11月に4億4740万米ドル相当の輸出を行っている。
こうした状況下、キューバでの産業に触手を示す米国企業からは、半世紀も続く経済封鎖が足かせとなっていることに不満も漏れていた。
オバマ大統領は会見でキューバへの経済封鎖を「私を含む多くの国民が生まれる前から存在した政策で、もはや誰も喜ばないものとなっている」と評した。同大統領は、キューバを「テロ支援国家」して扱うことをやめ、来月にはハバナに米国大使を派遣、米国人のキューバへの渡航を緩和するなどの対処を行うと発表した。また、両国がスパイ容疑で逮捕していた米国人2人、キューバ人3人も、この発表前に釈放された。
同大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長は、13年12月のネルソン・マンデラ元南アフリカ大統領の葬儀の際に握手を交わしていた。また、今回の国交回復は、アルゼンチン出身のフランシスコ・ローマ法王の仲介も大きかったと言われている。
両国の国交回復の報を受け、ジウマ大統領は「両国にとって本当に喜ばしい歴史的瞬間だ」と讃えた。そして、大統領選で対抗馬だったアエシオ・ネーヴェス氏(民主社会党・PSDB)を揶揄し、「選挙期間中に批判は受けたが、マリエル港はキューバの産業に不可欠な存在になっているではないか」と語った。
また、反米で知られるベネズエラのニコラス・マドゥーロ大統領もオバマ大統領を讃えたが、同時に「フィデル・カストロの勝利だ」とキューバを改めて賞賛した。
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