5日に財務相に就任したジョアキン・レヴィ氏は、その就任演説で財務省のスタッフを発表すると共に、前任のギド・マンテガ氏の経済政策を批判し、増税の可能性をほのめかした。さらに、従来のブラジル政府の方針に一石を投じ、より多くの企業を市場で競わせることの重要性を語った。6日付伯字紙が報じている。
レヴィ財務相は既に連邦政府の財政支出を抑える方針を打ち出しており、議会からの反発を招くと予想されているが、この日、同相は「経済成長や安定した社会発展のために支出を厳しく管理することは社会全体が願っていることだ」と改めて強調した。
レヴィ財務相は「収支の調整はもうはじまっている」とし、11月初旬にマンテガ前財務相が発表した、社会経済開発銀行(BNDES)などの公的銀行が提供する低金利の融資枠を減らし、失業保険などの社会保障や年金受給者が死亡した場合の遺族への年金の支払いなどに関する経費を抑制するなどの対策を実行しはじめたと語った。
また、「いくつかの税の調整も検討している」と発言し、2012年に実質税率0%となったガソリンなどの燃料に対する税金その他の増税の可能性を暗に示した。同財務相は「私たちは、ある特定分野で減免税を行うような楽な方法は模索しない。それは一見魅力的には映るが、国の支払い能力などをまず考えるべきだ」と語った。
所信表明では、連邦歳入局局長にジョルジ・ラシッド氏が復帰することなども発表された。同氏はルーラ第1期政権で増税も含む財務調整を推進した人物の一人だ。
これらの発言はマンテガ前財務相が行ってきた政策に対する批判とも取れるもので、マンテガ氏は、8年9カ月というブラジル史上最大期間をつとめた財務相だったにも関わらず、この日の就任式に姿を現さなかった。
レヴィ財務相はさらに、これまでの連邦政府のやり方を「パトリモニアリズモ」と呼んで批判した。これは「政治主権者の権力が強い」という意味で、ブラジルではルーラ前大統領による労働者党(PT)政権発足後、連邦政府が特定の企業に事業を任せ、特別な保護や推奨、支援を行うなど、企業や国家を政権担当者の意のままに動かそうとする傾向が強まった。
レヴィ財務相は「国の交渉ごとに個人的な感情などをさしはさむべきではない」と語り、その後行われたマスコミからの質問に対しても、市場におけるより活発な競争の必要性を説いた。
この日の会見にはブラジルの銀行関係者や財界の大物らが顔を揃えたが、彼らはこぞってレヴィ氏の発言を好意的にとらえ、「これで〃王の友達〃(政府からの恩恵を受けた特定企業)の時代は終わる」といった声が聞かれた。中央銀行元総裁のエンリケ・メイレレス氏は「正しい方向性をもった演説だった」とし、ブラジル銀行協会連盟会長で元財務局長のムリロ・ポルトゥガル氏は「経済成長のサイクルが戻ってくる」と喜ぶ一方、「15年はまだ困難も多く、民間の金融投資が鍵を握る」との見方を示した。