日本文化庁の「文化交流使」として来伯中の薩摩琵琶演奏家・櫻井亜木子さん(38、東京)が19日昼、サンパウロ市リベルダーデ区の熟年クラブ連合会会館で演奏会を行なった。
熟連の五十嵐司会長が歓迎のあいさつに立ち、「日伯外交樹立120周年の幕開けをお祝いする行事です。三味線、琴以外の極めて珍しい演奏会。素晴らしい音色を拝聴し勇気を頂きましょう」と、約80人の聴衆に呼び掛けた。
櫻井さんは琵琶の起源や種類、同楽器の伴奏に合わせて語る平曲「平家物語」との関係性を説明し、「白虎隊」、自身の楽曲「桜島」、童歌「とうりゃんせ」「かごめ かごめ」で観客を楽しませた。「平家物語」も披露し、有名な冒頭「祗園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり―」という一節も披露した。
事前の要望で鹿児島県生まれの関係者から「西郷隆盛」もリクエストされ、「出身者が目の前で聞いて下さるとあって、気持ちが引き締まった。でもちょっと緊張した」と胸をなでおろした。
父が鹿児島生まれという松島節子さん(77、二世)は「プロによる演奏を初めて聴けて感動的だった。聴き慣れた童謡まで弾いてもらえて良かった」。筝曲宮城会の長瀬玲子会長は「琴とは違って音色に幅がある。生の演奏を聴いて胸にビンビン響いた」と感激した様子を見せた。
開催に協力した鹿児島県人会の松村滋樹副会長は「薩摩琵琶を聴ける機会なんてめったにない」としみじみ語り、「熟連は一世ばかりだから多くの人に喜ばれた」と盛況ぶりに一安心した様子だった。
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サンパウロ市での公演はこの日が最終日。商議所の新年会、サンパウロ日本人学校、モジ文協、憩の園など計10公演で約千人を動員した。9日間の滞在を終え、「移民にとって日本は遠い記憶の存在かと思ったが、そうではなかった」と語り、コロニアに根付く日本文化に感激した様子を見せた。
「日系の子ども達の前で演奏を始めたら、スッと姿勢を正して黙って聴く姿が印象的だった。浴衣を着て邦楽器を弾くという、いかにも日本らしい姿を見て、何か感じるものがあったのだと思う」との喜びを口にした。