「原油価格が世界的に大幅下落をする中、唯一ガソリンが上がっている」そう経済評論家はブラジルを卑下する。財政政策のゆがみを正すべく、レヴィ財相が燃料増税を発表したからだ▼当地経済の要はペトロブラス(石油公社、PB)。インフレを抑えるために、PBは高い石油を輸入して安く売る不当な経済活動をここ数年続けさせられ、財務体質を悪化させてきた▼ジウマ政権はインフレを目標範囲に収め、経済収支を良く見せるために「ペダラーダ」(サッカーのフェイント)と呼ばれる複雑な会計操作を行い、この種のゆがみを広げてきた▼19日午後2時頃、サンパウロ州など10州と連邦直轄区を停電が襲った。原因は諸説あるが、記録的な猛暑により消費電力ピークが発電量を超えて配電システムが不安定化し、送電設備に一部故障が発生、全伯一挙停電を避けるために電力会社が一部配電を緊急停止したらしい。ここにもエネルギー政策のゆがみが出ている▼金融危機以後、経済指標を良く見せるためにIPI(工業税)減税を続け、クーラーなど家電を売りまくってきたが、電力供給能力は停滞したままで、そのゆがみが大停電となって現れた構図だ▼発電設備を増やすべく、現政権はPAC(経済成長促進政策)で巨額投資をしてきたが、受注企業の多くがPB汚職疑惑で逮捕された。ここでも政治家が同公社を食いものにしてきたゆがんだ構図がある▼左派政権の特徴は、全ての問題を政治的に解決しようとする独裁的な権力志向だ。良い意味で発揮されれば力強いが、悪い意味だと歪みになる。「歪み」は「正しからず」を一字に収めた漢字。今年は「正す」年になって欲しい。(深)