アルゼンチンの戦前移民の女性宅に食事に招かれたことがある。移住以来、日本に帰ったことがなく、「食事も現地のものばかり。口に合うかどうか」と恐縮気味。何を作っているのかと尋ねると、「日本語でなんと言ったらいいのかしら…」と首をかしげ、思いついたように「そうそう、西洋うどんよ!」。何だろうと考え込んでいると、出てきたのはスパゲティだった▼ブラジルでもかつての移住地では、「コロニアうどん」といって、安価なスパゲティを出汁に入れて食べていたという。製麺業者が出てきて、輸入の乾燥うどんも簡単に手に入る今、食べる人はいないだろう。試してみたが、味も食感も違うし、うどんへの郷愁高まる移民の代替食にしか過ぎないという印象だ▼話を中華麺に変える。リベルダーデでも何種類かあるにはあるが一玉あたりの値段は高いし、味もイマイチ。そんなおり簡単に中華麺を作る魔法を聞き、早速試してみた。スパゲティをゆでるとき、塩と同量の重曹を入れるだけ。これが不思議なことに、かなり近くなる。色々な種類で試しているが、カッペリーニの冷やし中華がお気に入りだ▼日本では最近、小麦粉や水、塩を放り込めば、自動的に様々な麺が出てくる機械が販売されている。あらゆる麺が簡単に入る日本では、受けないような気がするが、在外日本人向けにPRできれば反響は大きそうだ▼さて、サンタクルスで週末だけ開けていた讃岐うどんの店が近々リベルダーデに開くらしい。コロニア最初の日本食屋は、うどん屋だった。長く、うどん専門の店がないだけに、時代は廻るといったところか。(剛)