日ブラジル交樹立120周年を記念し、7月に日本からプロの能楽公演団15人が来伯する。劇場の下見や準備のため、プロデューサーの分林保弘氏(72、京都)がサンパウロ市を訪れ、12日にインターコンチネンタルホテルで記者会見を開いた。
京都観世流の能楽師の家に生まれ、3歳から能をたしなむ。日本M&Aセンター会長や日本ビジネス協会理事長として財界で活躍する傍ら、今も舞台に立つ。立命館大学に在学していた1965年は全米35州を巡り、20以上の大学で「全米能楽公演ツアー」を実施した。
昨年3月、千葉商科大学学長の島田春雄氏を団長とする「ブラジル経済使節団」に参加した際に福嶌教輝在聖総領事と面会し、「日伯120周年、在聖総領事館百周年、ブラジル日本商工会議所75周年と節目の重なるので何か催しをしたい」と持ちかけられ、「能でもやりましょうか」と応じた。
公演団を構成するのは、分林家の長男・道治さんを団長とする新進気鋭の若手15人。SESC商業連盟社会サービス主催で7月1、2の両日夜、SESCピニェイロス劇場(収容人数1010席)で能楽「船弁慶」と狂言「寝音曲」を上演することが決まった。
「海外でやる時はたいてい3~5人のワークショップ形式で、フルメンバーでやるのは珍しい」という。また、メンバーの内、道治さんを含む6人が重要無形文化財総合指定保持者という貴重な公演だ。後援にあたるブラジル能楽連盟の希望もあり、二日目の午後はワークショップも開かれる予定。
分林さんは「能は、西洋的芸術とは対照的に、『いかにして表現を抑えるか』という静の象徴的芸術。日本人の持つ心を表した芸術です」と能の魅力を説明し、「公演はポルトガル語での事前解説のみで、字幕はなし。でも源平合戦を描いた『船弁慶』なので、日系人にも分かりやすいと思う」と話した。