19日、べネズエラ政府が首都カラカスのアントニオ・レデズマ市長を逮捕した。反対勢力を抑圧するベネズエラ政府のやり方に国際的な非難が向けられている。20日付伯字紙が報じている。
現地時間の19日17時頃、カラカス東部にあるレデズマ氏の事務所を同国の中央情報局にあたるボリヴァリアーノ秘密部隊(Sebin)が包囲した。同隊員らは事務所に押し入って破壊行為を行い、レデズマ氏にも暴力を加えて連行した。
逮捕時には逮捕令状や捜索令状が出ておらず、明確な理由も正式発表されていないが、マドゥーロ大統領はテレビとラジオで今回の逮捕に触れ、「レデズマ氏はこれまでに犯した全ての犯罪について申し開きをすることになる」と語った。同大統領は、レデズマ氏は2002年にウゴ・チャべス前大統領打倒のためのクーデター計画に参加したとし、先週起きたクーデター未遂事件への関与もほのめかした。
同国ではほぼ1年前の2月18日、第3政党の人民意思党党首レオポルド・ロペス氏が、全国的なデモを扇動したとして逮捕されている。ベネズエラ政府はこのデモ弾圧で43人の死者を出しており、国連の人権委員会はロペス氏の釈放を同国政府に求めているが、未だに釈放されていない。
レデズマ氏が市長をつとめるカラカスは5市からなるカラカス大市圏の最大市だが、同市圏のうち4市の市長が反政府系ということもあり、中央政府は2009年に同市圏に市政とは別の部署を創設し、同市圏の特権と予算の大半を奪った。
同市圏エル・アティージョのアントニオ・スモランスキ市長は「この国には民主主義も正義もない」から、レデズマ氏の弁護は困難との見通しを示した。人権問題に関する国際的な非政府団体(NGO)である米国のヒューマン・ライツ・ウォッチは「専横なやり方」と批判した。
ベネズエラはこうした独裁問題に加え、68%にも及ぶインフレや生活必需品の不足などの問題にも瀕している。
一方、アルゼンチンでは、クリスチーナ大統領をイランとの密約問題で告発したアルベルト・ニスマン検察官が1月に謎の死を遂げて以来、同大統領への抗議活動が活発化している。同国も債務不履行で経済的危機が続いている。
ベネズエラやアルゼンチンはブラジルにとり、南米での重要な貿易相手国かつ同じ左翼政権ということもあって関係も密だ。その2国が国民の信用を損なう疑惑や経済悪化で揺れていることは、経済停滞を迎え、ペトロロンなどの汚職問題で揺れる労働者党(PT)政権にとっても耳の痛い話だ。