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ブラジルでホームスクールの波=求められるのは親の献身

 2012年よりブラジル教育省は、国家高等教育試験(Enem)の結果を高校課程を終えた証明書として認めている。本来は、規定通りの就学年齢で高校課程に入学できず、就職後などに短期集中コース(1年分を半年で履修)で高校卒業資格を取ろうとする生徒への救済措置として採用されたものだが、学校に行かず、家で勉強(ホームスクール)する生徒もこの方法で高卒資格を取る事が出来る。
 全国家庭教育協会(Aned)によると、2012年以来、ホームスクールをする家庭は倍増し、今では2千世帯を数える。
 ロレーナ・ジアスさん(17)は2010年、8年生の時に学校を去った。通っていたミナス州コンタージェン市の公立校ではイジメられていたし、頻発する教員のストや学校内で薬物を使う生徒もいることを両親が心配したためだ。
 最初に両親が決めた時間割や学習内容に関する基準は厳しかったが、この基準は時と共に緩和された。それで学力が落ちることは無かったかと聞くと、「時間を自由に使え、快適に勉強できた。学校だと勉強のリズムは先生が決めるから」と答えた。
 同世代の友人との交流は少なかったが、それを補うために両親は月に2度、ホームスクールをしている家族との交流の時を持った。さらに彼女は在学時の友達の何人かとの交流も続けた。
 ロレーナさんは現在ブラジリアに住み、同地の大学でジャーナリズムを専攻しようとしているが、高校卒業資格を認める書類がないのが悩みの種だ。Enemを受けられるのは18歳からなので、今、暫定令で受験できるよう、裁判所に申し出ている。
 ロレーナさんの父リカルド・ジアスさん(44)の元には多くの親達がどうやってホームスクールをやったらいいか聞きに来るという。「今では父親も母親も1日中仕事で外にいる」「それじゃダメだ。ホームスクールは出来ない」とジアスさんは言う。
 Enemによって高校卒業資格は取れるが、ホームスクールはブラジルでは法制化されていないので、家族は法の加護を受けられないことを承知していなければならない。さらにホームスクールはブラジル国内の法律「子供を義務教育に通わせなくてはいけない」に触れる、という法解釈もあり得る。
 多数の家族は法律上問題になったことは無いが、2010年ミナス州の夫婦が子供を自宅で教育したとして、9千レアルの罰金を科せられた例もある。
 その時の子供、ジョナタスとダヴィは今20歳と21歳で、現行教育を「ただの丸暗記」だと批判する。家では時間割は無く、勉強したい時にすればよかった。家では聖書をよく読んだし、2人ともITを学び、地域の人に乞われればホームページも作った。2011年には、デジタルアートやロボット工学、ゲームなどの最新技術を披露するイベント〃キャンパス・パーティ〃で表彰され、3万レアルの賞金を手にするほどだった。
 ダヴィは今ではミナス州ベチン市営病院、肝臓病部門のIT責任者で、「自分の子供も家で教育したい」と語っている。(25日付フォーリャ紙より)