3月7日(土)、50年前に米国アラバマ州セルマ市で起きた「血の日曜日」を記念するデモ行進が現地で行われた▼当時の同州は人口の半分を黒人が占めており、同年2月、黒人の有権者登録を求める公民権運動中に白人警官が黒人に発砲し、死亡する事件が起きた。黒人達は3月7日、警官隊が憲法違反をした事をアピールすべく、州都モンゴメリーまでの行進を試みたが、白人知事は公共の秩序を乱す恐れがあるとし、デモの阻止を宣言。無抵抗のデモ隊が棍棒や催涙ガス、鞭などで弾圧され、次々に倒れるシーンはTVで報じられ、米国の公民権運動を後押しする事になった▼黒人が差別と脅迫で有権者登録出来なかった事は今も起きる人種差別的行為からも窺われるが、自分達が参政権を得るために大きな犠牲が払われた事を知る人達が、米国初の黒人大統領誕生に貢献した事は疑いもない。50年代~60年代の米国でアフリカ系アメリカ人が公民権の適用と人種差別解消を求めて行った大衆運動の一つを記念するデモ行進は、人種や性差などを超えた自由と平等な世界観にも繋がる▼オバマ大統領一家も参加したデモの事を伯字紙が報じた8日は「国際女性デー」だった事も、自由や平等、参政権などに思いを馳せさせた。各々の権利獲得には多くの戦いがあり、その行使には大きな責任も伴うが、今も起きる事件の数々は人種や性差、社会階級などを巡る戦いが終わっていない事も示している▼権利に甘えず、正しく行使するには獲得までの戦いについて知る事も重要だ。小学校卒業時、「水を飲む時は井戸を掘った人の事を忘れてはならない」と書いてくれた恩師の事も思い出す。(み)