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パラグァイ=国境イグアスに司法の手=密輸を厳重に取締るブラジル政府=坂本邦雄

連邦警察に押収された密輸品や麻薬(Foto: Polícia Federal Foz do Iguaçu)

連邦警察に押収された密輸品や麻薬(Foto: Polícia Federal Foz do Iguaçu)

 幾多の手に負えない暴力や社会問題を併発するパラグァイ産タバコの大規模な密輸に手こずるブラジルは官民機関が共同して、タバコに限らずその他の多くのコモディティの国境地帯での闇取引の根絶に本気で乗り出し、更にパ国当局に対しても、これら不正通商の厳格な合法化への協力を強く求める方針を公表した。
 それで、ブラジルの政府と民間団体は去る3月3日はフォス・ド・イグアス市で歴史的合同会議を開催し、当の3月3日を『対密輸闘争ナシオナルデー』に定めた他に、パラグァイとブラジルの「国境地帯経済社会情勢研究所・Idesf」の調査に基く「密輸被害コスト報告書」の提出の機会ともなった。
 同Idesf・研究所の調査に依ると密輸が侵す経済的打撃の驚くべき被害規模は、ブラジル政府の警戒心を呼び覚まし、同日(火)フォス・ド・イグアスとサンパウロ、それにブラジリア各市で件の報告書の同時発表が行われる程に、それぞれ地域の警察や関係当局の大きな注目の的になった。
 フォス・ド・イグアス市はパラグァイからのブラジル全土への集中的密輸ルートの中心基地なのは公然の秘密であり、当然今回のこのイベントは全国で強い関心を喚起した。

 同報告書のデータに依れば、ブラジルは隣接10カ国との1万6850キロメートルにも及ぶ国境を持つが、押収密輸品の大部分は、パラグァイから渡ったものである。
 各地域当局の夫々部門の責任者やジャーナリスト等で満席の会場で同報告書の紹介に当ったIdesf・研究所のルシアノ・バーロス所長は、昨年度のタバコの密輸は総額45億レアル(夫々14億ドル、67億ガラニーに相当)の脱税を国庫に及ぼしたと述べた。
 そして、ブラジルが持つ課税レベルからの実収税高を見ると、正規輸入のパラグァイ産タバコは全体の僅か5%か10%に相当する納税しか行っていないと判断される。
 それで、パラグァイのタバコの主な仕向地はサンパウロとクリチーバの二地域だと云う説明である。
 同研究所の調査は2014年度の連邦警察、Receita(IRS・連邦収税局)及び鉄道警察の各資料を中心に為されたものである。
 押収された全密輸品の中で一番主立った(67・44%)物資はタバカレラ・デル・エステ㈱(Tabesa、オラシオ・カルテス大統領の企業)の製品タバコである。
 その様な事態の現実に鑑み、唯一の対策は、パラグァイの関係当局との円卓会議を保ちながら解決の道を追求する以外の方策はないとは、Idesfのルシアノ・バーロス所長の意見である。

密売増進と暴力の併発

 パラグァイからのタバコの集中密輸が及ぼす一つの大きな社会問題は、ブラジルとパラグァイの人達を、同じく禁止の麻薬や武器等々の闇取引にも巻き込み、これが頻繁に国境地帯の忌まわしい暴力事件に波及し、日増しにエスカレートしている事である。
 Idesf・研究所の調べでは、フォス・ド・イグアス(ブラジル)及びシウダー・デル・エステ(パラグァイ=巴)の両市で、少なくも1万5千家族の住民が直接コントラバンド(密輸)に依存し生活の道を得ているが、なお間接的にそれに関わっている人口は無数である。
 この違法経済活動が地域の社会道徳や正当市場のパフォーマンスを歪め、汚染するのが問題である。
 ブラジル当局及びIdesfの専門家に依れば、大量のパラグァイ産タバコの密輸は、正に今日ブラジル国内で当のマフィア犯罪組織の効果をもたらした。
 こうして国境地帯の犯罪組織は、ブラジル及びパラグァイ、それぞれの内国地域のそれよりも遥かに良く組織化されている、と連邦警察の高官は語り、一方Idefのルシアノ・バーロス所長はその様な現在の状況は既に限界の域に達したと憂慮の意を表した。
 事実、ブラジル政府の危機感は深く、国境地帯の学校の生徒達に対し、Receita(連邦収税局)や衛生省の当局者は「喫煙の危険」についての啓蒙運動に努めていて、タバコの恐ろしさを子供達に説明して回っている程である。

マネー・ロンダリング

 この5日(木)は、EFE電に依ればブラジルフォス・ド・イグアス市で連邦警察は、パラグァイからの麻薬密売とコントラバンドに関わる大掛かりなマネー・ロンダリング犯罪を突き止め、少なくも29人のブラジル人容疑者を逮捕した。
 ブラジル連邦警察のこの大型検挙は、あたかも一昨日(火)フォス・ド・イグアス市で「対密輸闘争会議」が開かれたばかりの処で決行された。
 多くの国境都市の中でもフォス・ド・イグアスは、パラナ河対岸パラグァイのシウダー・デル・エステ市に面し、双方相まってブラジルへの最大の密輸基地として見られているのだ。
 今回検挙されたグループは最近過去5カ年間にブラジルとパラグァイの国境地帯で、およそ2億ドルにも及ぶ資金洗浄を行ったと言われている。
 このマフィア組織の構成員は87社の、その多くはダミー会社名義の各銀行口座を使って、主にタバコの密輸で得た収益金のマネー・ロンダリングを行っていたとは、エステ市(巴)、プエルト・イグアス市(亜)との三国国境のフォス市(伯)のリカルド・クバス・セサル警察官の説明である。
 しかしEFE電は何故かその犯罪組織に関わる構成メンバーの名前や各会社の名称には触れていない。
 他方、オ・グローボ紙はWEB電子版で、同事件で検挙された容疑者中に大学教授と実業家二人の存在を指摘し、これ等が同犯罪組織の頭目格の人物であると報じているが、同じく両者の名前は伏せたままである。
 ブラジル連邦警察はこの度のマフィア検挙を『ベモール(Bemol)作戦』と名付け、連邦警察の200名の実働隊員とReceita・収税局要員30名の出動を以って68件の家宅捜査を行った。
 この「ベモール作戦」はパラナ、サンタカタリーナ及びリオグランデ・ド・スール各州で同時に実施された。