8日夜、ジウマ大統領がテレビとラジオを通じて行った政見放送の間、全国12州の通りでは、最近のジウマ政権が抱える問題に対する不満を表明する国民が鍋を叩いて抗議したことは、10日付本紙でも報じた。
だが、この報道に「なぜデモで鍋を?」と思われた方も多いのではないか。そこでこの場を借りて、「鍋たたきデモ」こと〃パネラッソ〃について説明しよう。
「パネラッソ」はそもそも南米のスペイン語圏で行われていたもので、スペイン語では「カセロラーゾ(Cacelorazo)」と呼ばれている。ウィキペディアに乗っている用語も、「パネラッソ」ではなく「カセロラーゾ」で登録されている。
ウィキペディアの英語版によると、パネラッソは1971年にチリで行われたのが最初だということだ。この当時のチリは、サルバドール・アジェンデ大統領による社会主義政策が失敗して、深刻な品不足も起きていた。このとき、国民が物資不足に不満を表明しはじめた方法がパネラッソだったという。このパネラッソは、アジェンデ政権を倒して長期の軍事独裁政権を築いたアウグスト・ピノチェト大統領の治世が終わる80年代いっぱいまで、チリでは一般的な抗議手段だったという。
だが、それを南米に思い出させたのが、2000年代以降のアルゼンチンだった。同国は2001~02年に金融危機に陥っており、そのときに国民がとった政府への抗議行動がパネラッソだった。
それ以降、パネラッソの波は南米のみならず全世界的に広がり、アイスランド、メキシコ、スペインなどでも行われた。パネラッソが普及した理由としては、この方法が非暴力的で平和的であることが好まれていることがあげられる。
ここ最近のパネラッソとして、は2012年11月にアルゼンチンのクリスチーナ大統領の任期延長を認める法改正に反対し、ブエノスアイレスで70万人を動員したものや、ベネズエラの大統領選挙でのエンリケ・カプリレス候補の落選に不満の国民が13年4月にカラカスで起こしたものが有名だ。
ブラジル国内でのパネラッソは、8日のマニフェスタソンで本格的に知られるようになった。15日にはジウマ大統領罷免などを訴える全国的なマニフェスタソンが予告されているが、そこでも鍋の存在が大いにクローズアップされることになるだろう。
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