JICA短期グループ派遣ボランティアとして今月1日から来伯し、麻州、パラナ州など各地を巡回し、親善試合や地元の子供達への野球教室を行ってきた総勢18人の日本体育大学(以下日体大)野球部が、22日にサンパウロ市ボン・レチーロ球場で、ブラジルU―18(18歳以下)代表チーム(以下ブラジル)と親善試合を行った。
試合は奔放なバッティングでブラジルが先行するも、日体大も犠牲バントや走塁でかき回して対抗、ブラジルに守備の乱れも出て追いつく、といった接戦で推移した。3―2でブラジルのリードで迎えた最終回、日体大は無死満塁と攻め立てたが、後続が三振、併殺打に倒れゲームセット。今年8月に日本で行われるU―18世界選手権を見据えるブラジルが勝利した。
試合後両チームはユニホームを交換し、記念撮影のほかに、日体大部員が、いかにも体育会らしく、同大伝統の上半身裸で掛け声を出して踊る「えっさっさ」を披露し、ブラジルチームもそれに加わるなどして親睦を深めた。
09年から11年に青年ボランティアとしてサンパウロ州インダイアツーバ、イビウナで野球を指導し、13年のワールド・ベースボール・クラシックではブラジル代表チームの打撃コーチも務めた、同大野球部の黒木豪コーチ(29、宮崎)は、「どっちのチームにも自分の教え子がいて感無量。ブラジルは〃最終回1点リードで無死満塁〃を守りきるあたり、我慢強さが身についたと思う。8月に日本で開催されるU―18世界選手権でも上位を狙って欲しい」と期待を述べた。
今回の日体大の選手達は4月からの新3、4年生で、野球部の中でも「学生コーチ」という役割。普段は試合に出る選手の練習相手になったり、主な卒業後の進路である教員を視野に、野球を教えることに取り組んでいる学生達だ。
去年に引き続き参加した主将で新4年の小林大和さん(21、京都)は、「ますますブラジルが好きになった。去年からポ語も勉強し、メインの野球教室も上手く言った。去年と今年、同じ子供が成長していたのをみられて嬉しい。野球を通じて言葉を超えたコミュニケーションができた。教員を目指しているが、先輩の黒木コーチのように海外に出てもみたくなった」と語った。
大塚ジョルジブラジル野球ソフトボール連盟会長(68、三世)は、昨年以来2度目の日体大野球部来伯について、「日本野球の緻密な守備、走塁、グラウンド内の規律など、若いブラジル人選手が学ぶことが多くあり、とても有意義。この経験を今年8月のU―18世界選手権、来年末の2017WBC予選に活かしたい」と高く評価した。
日体大の一行は25日に24日間の滞在を終えて帰路についた。
【大耳小耳関連コラム】
大塚ジョルジブラジル野球連盟会長に、「ブラジル野球にとっての夢は何か」と聞いたところ、「学校や仕事の後に存分に練習するため、まずはナイター設備の球場が欲しい」とのこと。「プロ設立」や「日本や大リーグの公式戦開催」といった派手な夢ではなく、選手の練習環境向上を挙げるなど地に足のついた考え方だった。「国内に野球用具メーカーがないので、用具は全て輸入品。日体大からの中古野球用具提供はとてもありがたい」とも。前回の13年WBCでは、日本相手に8回までリードを奪うなど将来注目を浴びる可能性が高いブラジル野球―ぜひ企業からもっと協賛を。