今年はジャパンハウス始動の年。外務省によるとジャパンハウスとは「日本に関する様々な情報がまとめて入手できるワンストップ・サービスを提供すると共に,カフェ・レストラン,アンテナショップ等を設置し,民間の活力,地方の魅力なども積極的に活用したオールジャパンでの発信」の場であり、「現地の人々が「知りたい日本」を発信することをコンセプト」とし、さらに「日本への関心が必ずしも高くなかった人々を含めた幅広い層に対し,日本の「正しい姿」や多様な魅力を発信しながら,親日派・知日派の裾野を拡大していく」ことも同時に狙っている。経済力や商品開発力でかつて世界を席巻していた時代もあったが、今や中国や韓国が経済・外交面でも力を示すようになり、一時の輝きを失いつつある日本。親日的で日本文化のファンも多く、かつ150万人の日系人のおかげで強い信頼感があるブラジルにおいても、近年日本および日本企業の存在感は薄れつつあるだけに大変時宜を得た良いプロジェクトだと思う。一方で、くれぐれも箱だけ作って魂が入らないようなことだけは避けなければならない。
実はこれは海外の人に向けたPRであると同時に、日本が今後単に経済力だけではなく、どのようにして世界に対して影響力を発揮していくかを自ら振り返って考える貴重な場ではないかと思う。日本人が当たり前、古いと思って切り捨てようとしているものが、外国人から非常に評価され、後世に伝えるべきであると再認識させられたり、逆に技術に絶対の自信を持つ製品が、海外から見ると不要にハイスペックとして相手にされなかったりと、ジャパンハウスでの情報発信は、裏返すとグローバル化への情報収集の場になる。さらに情報発信だけではなく、常時そこに日本の文化や技術をテーマに両国の人が集まり、一緒に何かを作り上げたり、日本の文化と現地の文化を融合して新たなカルチャーを生み出したり、ジャパンハウスがそういう協創の場になれば、活気がある施設になるだろう。先日日本でサムライインキュベートという、若者たちが中心のスタートアップ支援企業と話をしたが、ここでは若者たちのパワーで年間200ものイベントが行われ、7年で100社近くもの起業を生み、投資家も多数集まり、すでに公開する企業も輩出し、5号ファンドまで組成されている。サムライスタートアップアイランドという箱モノを活用して、見事に成果をあげている。さらにイスラエルに進出をし、現地でも日本文化を紹介するイベントをしながら、日本と連動した起業家育成を行っている。例えば県連若手の日系2世、3世とも連動しながら、ジャパンハウスの中でこのようなインキュベーションを運営できると面白い。
さらにそれらの起業家たちと、これまで日本とブラジルの間で事業化が難しかった2つの分野を組み合わせられると相乗効果が期待できそうだ。地方自治体などと一緒に商談に来るがその後が続かない地方の中小企業とコンテンツ分野だ。以前某テレビ局からも著作権処理の終わっている50程度のアニメのブラジル展開も可能という話もあったが、日本の漫画やアニメは確かに人気ではあるが、海賊版も多く、結局日本の著作権保有者には利益が入らないケースが多い。どちらもショールームとプレゼンテーション設備、そして継続的に現地でフォローアップする人材が必要だが、ジャパンハウスと起業家が連動すれば、事業化につながるケースも出て来るに違いない。
ジャパンハウスで日伯の若者が躍動する姿が見られれば器に魂が宿るだろう。