ホーム | 日系社会ニュース | 電線大手フジクラ=南大河州に新工場を落成=光ファイバー現地生産へ=中南米市場参入に本腰
テープカットで工場落成を祝う関係者と来賓。左から二人目が重年氏、中央左が長浜氏、右端が西村氏
テープカットで工場落成を祝う関係者と来賓。左から二人目が重年氏、中央左が長浜氏、右端が西村氏

電線大手フジクラ=南大河州に新工場を落成=光ファイバー現地生産へ=中南米市場参入に本腰

 電線御三家(住友電工・古河電工・フジクラ)の一角をなすフジクラ株式会社(本社=東京都江東区、長浜洋一取締役社長)の現地法人「Fujikura Cabos para Energia e Telecomunicacoes Ltda.」(以下「フジクラカーボス」)が、このほど南大河州モンテネグロ市に新工場を落成、今月からOPGW(光ファイバー複合架空地線)を主力商品とする電線の生産を開始する。国内OPGW市場で顕著な市場シェアを占め、敷設工事も手がける「Procable Energia e Telecomunicacoes Ltda.」(本社=サンパウロ州ジアデーマ市、西村フミタカ社長、以下「プロケーブル」)と手を組み、電線需要増が見込める中南米市場の開拓を図る。

新工場の外観

新工場の外観

 今年で創業131年を迎えるフジクラは、電力・自動車用電線、電子部品などを手がける日本の業界大手だ。世界に関係会社139社を有し、光ファイバーやフレキシブルプリント基板では世界でも有数のシェアを誇る。昨年の売り上げは65億米ドルを記録した。
 総売り上げの約57%を海外に依拠するが、アジア(26・2%)や北米(17・7%)、欧州(10%)が中心で、中南米その他地域が占める割合は3%とわずかだった。インフラ需要増が見込める中南米に狙いを定め、ブラジルを拠点に市場拡大を図る方針だ。
 13日に新工場で開かれた記念式典で、長浜取締役社長は「15年ほど前からプロケーブルと提携し、OPGW2万キロメートル超を納入し、ブランド認知も高まってきた。これからはプロケーブルの営業力とエンジニア力、フジクラの技術力を合わせ、ブラジルのインフラ構築に貢献することが使命」と述べた。
 新工場への投資額は3500万レアル(約15億円)、敷地面積は14万4千平方米。当面は30人弱で稼動しOPGW、ACSR(鋼心アルミより線)など数種の電線生産から始め、徐々に商品数、従業員共に増やしていく意向。

世界シェア1位のフジクラ製融着機

世界シェア1位のフジクラ製融着機

 OPGWは電線の内部に光ファイバーを内臓したもので、日本では全国展開されている。フジクラの製造拠点は米、中、独。現地生産に切り替えることで20~30%のコスト減が実現できる。当地の競合他社は古河電光、プリズミアなど。
 フジクラカーボスの社長に就任した重年生雄氏は、「総売り上げにおける比重を1~2年の内に5%、将来的には10%まで引き上げ、最終的には中南米全域を市場にすることが目標」との展望を語った。今年は3300万レの売り上げを目指す。

 

【コラム大耳小耳】

 中南米への進出に本腰を入れだしたフジクラ社。同社が直近の30年間、世界シェア1位を誇るという融着機(光ファイバーを接続できる小型機器)もプロケーブルを通して販売を強化する。本社精密機器事業部の井出裕美さんによれば、同機器を製造する企業は日本に3社、韓国に3社、中国には20社以上ある。当地にも導入されている中国製はコピー商品が多く、質も劣るため、「フジクラ製を頑張って売り出して、中国製を駆逐していく。軌道に乗れば自分も駐在するかも」と強気の様子を見せていた。


■ひとマチ点描■南伯に根を張った戦後技術移民

早﨑勉さん(65、東京)

早﨑勉さん(65、東京)

 フジクラ社が南大河州モンテネグロ市に開設した新工場のお披露目式で、融着機紹介コーナーの通訳を務めていた。「恥ずかしいから」と照れて尻込む所を、「ぜひ記念に」と説得してパシャリ。
 20代の頃、8カ月間世界を旅した元バックパッカーだ。海外雄飛という大望を抱き、1973年、海外移住事業団を通して渡伯、モジ・ダス・クルーゼス市の豊和工業で自動織機の設計に1年携わった。
 戦後移住者らしく「日系企業にいても言葉が覚えられない」と考え、27歳でポルト・アレグレのPUC大で工学を学びなおし、現地企業でブラジル人と渡り合ってきた。長年、電話やパソコンの電源開発などに従事していたが、昨年6月からは通訳・翻訳業に専念する。
 「2~3年しかいないつもりだったけど、人が明るく朗らかで、生活をエンジョイしている所が好き」とポルト・アレグレ市に根を張った。娶った妻もドイツ系。「ここは気候もいいし、すっごく住みやすい。本当によい所ですよ!」と陽気な笑顔を見せた。(阿)