ブラジル式民主主義の限界―という言葉が頭から離れない。一番、民主主義を声高に叫んできたはずの労働者党の現役会計が、汚職で逮捕されたからだ。与党の会計、ペトロブラス幹部、闇ブローカーがスクラムを組んで汚職を行っている構図が、連警から指摘されている▼汚職摘発が厳しくなり、以前なら政治家がスイス等に持つ秘密口座に振り込んでいた企業の賄賂を、ペトロロンでは政党口座に堂々と振り込み「選挙裁判所に登録された企業献金」と弁護するようになったと連警は見ている▼つまり、形としては公式な献金だが、実は賄賂として事前に打ち合わせされていたか―が捜査の焦点だ。ペトロブラスから工事を受注した見返りに、それを仲介した政治家や職員に企業が受注額の約2%を賄賂として払っていた因果関係が立証されれば、賄賂となる▼政治家は汚職の金を懐にも入れるのだろうが、選挙資金になる部分も多いに違いない。以前、サンパウロ州地方部の市局長と話していた時、「選挙期間中、毎朝、自宅の前に電気料金や水道料、電話代を手にした近隣の庶民が『これを払ってくれたら投票する』と列をなすんだ」と嘆いていた。これが選挙の現実なら、有権者の意識レベルを上げないと汚職は無くならない▼国民の過半数を占める貧困層が汚職政治家にぶら下がって現政権を支え、多くの税金を払う意識の高い中流階級が街に出て汚職撲滅デモに参加している構図だ。83年に国民が投票する大統領直接選挙制を求めたことから軍政が崩れ、この国の民主主義は再出発した。実はその時から貧困層と中流階級の葛藤が組み込まれていた。そんな背景がペトトロンにはある気がする。(深)