秋雨が降り、無数の白いプラスチックの座席板が乱れ飛ぶサンパウロ市東部イタケーラ。コリンチャンスの難攻不落の要塞「アレーナ・コリンチャンス」がついに陥落した。
18日、サンパウロ州選手権準決勝コリンチャンス対パルメイラス戦が行われ、ここまで無敗で勝ち進んできたコリンチャンスが、パルメイラスにPK戦の末敗れるという波乱が起きた。
同時期に行われているリベルタドーレス杯と並行して戦ってきたコリンチャンスは超過密日程で、直前のアルゼンチンの雄、前回南米王者サンロレンソとの試合を辛くも引き分けてから中2日。対するパルメイラスは休養充分の中6日だ。
さらにコリンチャンスは得点源のエース、パオロ・ゲレーロがデング熱で出場できず、最近のパフォーマンス低下は明らかだった。それでもホームスタジアム、対パルメイラス戦、今期公式戦、全てで長く無敗記録を継続中のコリンチャンスが有利かと思われていた。
試合前夜、コリンチャンスのサポーターグループのメンバー8人が何者かに殺害される(犯人、原因は現在も調査中)大事件もあり、ふだん総立ちで荒々しく応援する北スタンドも黙祷。巨大な黒いたすき状の旗を掲げ、試合が始まった後も8分間もの着席と沈黙で哀悼の意を表するなど、異様な雰囲気で始まった。
試合は一進一退の攻防で2―2。パルメイラスが先制、コリンチャンスが逆転再びパルメイラスが同点という展開で、ゴール裏最前列に陣取った筆者は、となりの友人がゴールの度に柵に身体を投げ出すので、落ちないように押さえるのに必死だった。全くお構い無しに暴れる友人の振り回す腕にあたりメガネも吹き飛んだが、奇跡的に壊れることは無かった。
試合はPK戦に入った。コリンチャンス5人目は決めれば勝ちのキックで痛恨の失敗。7人目までもつれたが、最後にペトロスが外し、パルメイラスが決勝に駒を進めた。
敵のホームスタジアムでは珍しいことに、勝ったパルメイラスの選手は応援席にヴィクトリー・ラン。ファンと共に勝利の喜びを分かち合った。
軍警の厳重警備の下、スタジアムの一角に押し込められたパルメイラスのサポーターは喜びの余り座席を破壊。相撲で番狂わせが起きた際に座布団が舞う時のように、壊したプラスチックの座席板を、ブーメランの如く投げていた。
敗戦のショックで、足もずっしり重くなった帰り道、行き交う人に「コリンチャンス残念だったね」とか「ザマーミロー」などと声を掛けられ、「サッカーが本当に根付く国に来たんだな。こんな悔しさもまたサッカーの魅力の一部だな」と自らを慰めた。(規)
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