ホーム | ビジネスニュース | LJの余波どこまで=IHI、三菱重工も渦中に=(上)=石油採掘船の建造停止で=人員整理や契約破棄続く
新しい船の歓声を喜ぶEASの従業員ら(Roberto Stuckert Filho/PR)
新しい船の歓声を喜ぶEASの従業員ら(Roberto Stuckert Filho/PR)

LJの余波どこまで=IHI、三菱重工も渦中に=(上)=石油採掘船の建造停止で=人員整理や契約破棄続く

 連邦警察のラヴァ・ジャット作戦(LJ)でペトロブラス(PB)絡みの大型汚職〃ペトロロン〃が摘発された事などで、日本企業も参与している造船業界に深刻な影響が広がっている。

 7日付ヴァロール紙によれば、日本企業も参与しているアトランチコ・スル造船(EAS)や大河造船(ERG)、エンセアダ造船工業(以下、エンセアダ)を始めとする造船会社は、PB用の石油採掘船建造などを担当するセッテ・ブラジル社(以下、セッテ)からの支払いが滞り、窮状に陥っている。
 セッテは2010年創業の造船会社で、PBならびに、PBやブラジル銀行、連邦貯蓄銀行、Vale各社の年金基金などが出資している。同社は2011年に岩塩層下の石油採掘船21隻の建造を220億ドルで落札するなど、岩塩層下の石油採掘用の船計29隻の建造を受注。建造には先の3社を含む五つの造船会社があたっている。
 ところが、原油の国際価格暴落やブラジル政府の燃料価格統制、低価格のガス発見による競争激化、LJに伴う大損失などでPBが当初の計画の変更を余儀なくされた事や、セッテ自身もLJの捜査対象となった事などで、14年11月以降、同社から造船会社への支払いが止まっている。
 この事もあり、EASは14年10月以降、従業員を大幅削減。同社の財政状態は2005年の創業以来、最悪で、共同出資者のカマルゴ・コレア、ケイロス・ガルヴォン、日本企業グループが昨年末に5千万レアルの緊急援助を行い、更に1億レアルを投じる予定だ。同社は自衛策としてセッテから受注した採掘船7隻の建造約契約(52億ドル)を破棄し、PB傘下のトランスペトロから受注した採掘船建造事業の継続と支払いの要請をしたが、同社従業員は11年当時の1万1千人の3分の1に減った。 同社に出資している日本企業はIHI(旧石川島播磨重工)とジャパンマリンユナイテッド、日揮で2012年に参画。昨年初頭に出資率を33・3%に引き上げた。
 ERGに参画している三菱重工は、2013年にエンジェヴィクス・コンストルソンエス・オセアニカス(Ecovix)の権利の30%を3億ドルで取得。ブラジル側のエンジェヴィクス・グループはLJで摘発されており、出資率を下げる可能性がある。エンセアダには2012年5月から川崎重工が共同出資している。
 3月27日付エスタード紙によれば、日本政府は3月23日、ブラジルの商工開発相に、日本企業が関わっている造船3社へのセッテ側の負債は13億レアルに上っており、ブラジル政府が救済措置を採るよう要請する文書を送付している。 (続く)