もうちょっと歩いて、ようやく目的地に着いた。原っぱの真ん中に大きな焚き火が燃えていた。周りには串刺しの肉が並べられ、焼ける肉から落ちる脂がジュージューと音をたてていた。炭火の上には鉄のやかんが並べられ、湯がたぎっていた。その辺には銃が吊るされ、軍靴がほ乾され、外套が広げられ、ポンチョが枝にぶら下がっていた。
羊の毛皮や鞍の敷き皮に寝そべって、多くの兵士達はいびきをかいて眠っていた。他の者はシャツのままで、たばこを吸ったり、のんびりマテを飲んだりしていた。
木陰に幌つき荷車が止めてあった。太い棒杭にはとうもろこしの芯で栓をした大きな瓢箪がぶら下がり、女の服が風にゆれていて、その荷車がどういうものかを物語っていた。すぐそばに焼肉の焚き火がもう一つたかれていて、やかんに湯がたぎり、何かをぐつぐつ煮ている鍋がかかっていた……。青っぽい煙が一面に立ち込めて、強烈な日差しの下の野営地いっぱいに広がっていた。
縄で繋がれた二頭の馬と、立派な馬具をつけ、足縄をかけられたもう一頭が草を食んでいた。
森から出るとすぐ、このような光景が目に入った……つまり、全てがだらけきった野営地なんだ。
シルーは馴れた様子で歩いていき、わしはその後に続いた。そのとき、馬具の間で寝転んでいた一人が叫んだ。
「おい、そこの騒々しいやつら、ここはファラッポスの兵営とは違うぞ……。おれ達に挨拶もしないで……」
「マルコスに言われて参りました……」
「どこのマルコスだ?」
「歩哨のマルコスです……それから、もうひとりの歩哨のジョアン・アントニオにも頼まれて……はい。隊長に言づてがあって来ました……」
「ああ、そうか……。しかし、隊長は昼寝中だ……。よかったら、あそこで待て。あの幌荷車の側だ。あんたら、もう食ったのか。」
「もう、済ませました。」
「それなら、行け!……」
そう言って、幌つき荷車の方を指した。
わしらは、荷車の陰で車輪の滑り止めに頭をあてて休んだ。わしは真っ赤な炭火の上で寝ているような気分だった……いや、それでも言い足りないぐらいの心地だった。
全く!……わしらの正体がばれたら、生きたまま八つ裂きにされてしまう……。
ピクマンは仮寝をしていた……が、けっして警戒を怠らなかった。その証拠にときどき薄目を開けて、黒いまつげの陰から白眼が鋭く光るのをわしは見逃さなかった……。
兵士どもは焼きあがった肉を火から取り、数人ずつ輪になって食い始めた。