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沖縄系コミュニティの複雑な事情

フォーラムの中で沖縄の黄金言(こがねことば)について講演する様子

フォーラムの中で沖縄の黄金言(こがねことば)について講演する様子

 「ウチナーグチ(沖縄語)は無上の財産」をテーマにした沖縄県人会フォーラムに参加し、「ブラジルでポ語中心に行われた」ことに感じ入った。と同時に事情の複雑さに考えさせられた。一県人会がこのような催しをすること自体がすごい▼ただし気になったこともある。講演者からは、琉球王朝が日本政府に併合され沖縄語使用が禁止となり、日本文化が押し付けられたことを批判する声が聞かれた。それなら、なぜ戦前戦中のバルガス独裁政権の同化政策への批判はないのかと▼琉球諸島で絶滅危惧言語は6言語あり沖縄語が入っているが、ブラジルにも絶滅に瀕する言語が190もあるとユネスコは発表している。イエズス会がインディオ教化をした時、ポ語を強要して彼らの言葉でしゃべると罰を強い、文化を奪ったからだ▼このフォーラムがなぜポ語かといえば、ブラジル政府の同化政策が奏功し、日本人でなくブラジル人世代になったからだ。同県人会創立者の一人、翁長助成も『学友』第8号(1938年9月)に「ポ語第一を提唱す」と寄稿し《日本語は親との家庭内の会話ができる程度でよい。第二世の教育はポ語を中心とすべし》という「伯主日従主義」を唱えて実践し、日系初の新聞記者・英雄を育てた。この日本語は沖縄語と読み替えてもいい▼移住以前の歴史を持ち出して日本政府ばかり批判するのは、どこか過去へ編重した歪みを感じる。いま当地で沖縄語話者が減っているのは日本のせいではない▼むろん母県との関係は大事だが、当地独自のポジションもあるに違いない。他県より気持ちが近いだけに距離感の置き方が、とてもむずかしい。(深)