昨年同期比で販売台数20・6%減(ブラジル自動車製造業協会=ANFAVEA統計)という危機的な状況の中、日本勢が気を吐いている。5日付け経済紙「ヴァロール」によると、金利上昇や個人負債増加で大衆車販売数が激減する中、ホンダやトヨタの高級車が業績を伸ばし、業界再編の中心になっていると報じている。
ヴァロール紙によると、ホンダは昨年同期比(1~5月)で16・4%の増加を見せ、台数にして8383台増しとなった。好調のHR―Vは3カ月待ちという状況で、フィットは30・4%、シティは26%とそれぞれ増加している。高い需要に応じるためスマレー工場では、毎日3時間の残業生産を行なっている。
トヨタも同様に、同期比2・7%(1868台)の伸びがあった。そのけん引役になったのは、新興国向け大衆車種エチオスではなく、カローラで昨年比30%増だという。
同紙はこの2社が好調な原因を、富裕層向けの車種を扱っていることだと見ている。金利上昇によってクレジットカードの負債が膨れ上がると同時に、自動車ローンに大きな影響を与えており、低所得層ほどその悪影響を強くこうむっていると分析する。
元々高級車を志向する富裕層は、頭金で半額を支払うなどの資金力があるために、金利上昇の影響を受けにくい。このため富裕層に好まれる車種ほど危機の影響を受けにくいという結果につながっているようだ。
同様の理由で、ドイツから輸入販売しているアウディやメルセデス・ベンツの高級車も影響は少ない。昨年同期比で販売台数を伸ばし、過去最高の業績を記録している。
これまでブラジル市場はフィアット、GM、フォクスワーゲン、フォードの4社が市場の大部分を占めていた。過去12年間は4社で84%を占めてきたが、今年は62%まで落ち、業界内で大再編が起きている。
中でもフィアットは5月までの販売台数が、昨年同時期に比べ約9万台減。ワーゲン、GMも5万台以上減らしている。工場での生産を停止するため、集団休暇を与えるメーカーも多い。1日付けヴェージャ誌は《(GMやメルセデス・ベンツなどを中心に)自動車産業では6月から2万1400人の金属工が集団休暇などを経て解雇されると見られており、その数は4万人に上るとも言われる》と報じた。
危機の中で自動車業界は大きく明暗を分けている。
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