サンパウロからの長距離バスを降り間違え、サントスバスターミナルからみるみる離れていくバス。しかしこれが幸いした。スタジアムの近くを通るらしい。道すがらに見つけたサントスFCの練習場には、ペレやロビーニョ、ネイマール、さらに日本人へのサービスだろうか、カズの肖像画も描かれていて、100年を越える同チームの栄光の歴史を感じさせる。試合前の時間つぶしにはもってこいだった。
1916年に建てられたサントスFCのホームスタジアム「ヴィラ・ベルミーロ」は、収容人数1万6千人強と、小さいながらも趣のあるスタジアムだ。いたるところにチーム歴代会長の肖像画や銅像、ペレを称えるタイル画も飾られ、敵チームながらうっとり眺めてしまった。
困ったのは試合中、周りのサントスFCファンがコリンチャンスにあらん限りの罵声を浴びせている中、スタジアムの一角に押し込められた500人ほどのコリンチャンスファンの応援歌をつい口ずさんでしまうことだった。記者はJリーグやソウルでの韓日戦、ロンドンでのチャンピオンズリーグで、ホーム応援席でアウェイチームを応援したことがあるが、危ないことはなかった。
しかし、ここで同じ事をしたら何が起こるか全く予想がつかない。かくして心とは裏腹にサントスFCのゴールに喜ぶふりをして、コリンチャンスに罵声を浴びせるふりをした。コリンチャンスのマークが入ったキーホルダーを落とさなくて本当に良かった。
試合の方は、コリンチャンス、やはり調子の波が大きいか、開始早々に、今年絶好調のサントスFC、元セレソンFWのリカルド・オリヴェイラにディフェンスラインの裏を突かれてあっさり失点すると、反撃の糸口もつかめないままに0対1で敗れ、全国選手権3連勝はならなかった。
サントスは街全体がサッカー博物館といった趣で大いに堪能したが、試合は残念な結果になった。(規)