現在訪米中のジウマ大統領は6月29、30日にオバマ大統領と会談を行い、30日には「不法伐採ゼロ」などを目標とする共同宣言も行った。6月27、30日付伯字紙が報じている。
ジウマ、オバマ両大統領のホワイトハウスでの会談は2013年10月に予定されていたが、その数カ月前に、米国の国家安全保障局(NSA)がジウマ大統領や側近の盗聴を行っていたことをNSA元局員のエドワード・スノーデン氏が暴露して、両国間の関係が気まずくなっていた。
だが、その後、中国の経済状況悪化でブラジルのコモディティ輸出が落ち込み、経済的打撃を受けたことで、その打開策を米国に求める気運が高まっていた。
ジウマ大統領としても、今回の訪米によってブラジル産業の足かせとなっている教育、科学、テクノロジーの分野で米国から学び、それをブラジルの発展に生かしたいと考えている。
今回の訪米にはそうした経済発展への期待もこめられているが、6月30日に行われた共同宣言の中心は、昨年の国連気候サミットで発表された「森林に関するニューヨーク宣言」に準じた環境問題に関するものだ。ブラジル側は同宣言で、2030年までに12万平方キロの森林を回復することと不法伐採をゼロにすることを約束した。エネルギー部門では、再生可能な資源の利用を28~33%拡大することも盛り込まれた。
また、6月29日には米国の衛生管理局が、ブラジルの主要産地14州からの牛肉の輸入解禁を認めた。今後さらに、米国での効果的な配給が可能な企業を選ぶことが出来れば、米国でのブラジル牛の普及拡大にもつながる。米国企業の選択はブラジル農務省の管轄となる。
29日にはジャック・ヴァギネル国防相とアシュトン・カーター米国国防相とのあいだで、軍事協力のための協定の調印も行われた。この協定は、両国の合同軍事訓練の強化や軍事技術の交換などを定めたものだ。米国としては、イランやシリアの問題に対し、ブラジルに協力を求めたい意向だが、ここまでブラジルは中立の立場でいる。
今後の会談では、両国間の貿易量の増加に関する具体的な話し合いが課題となる。現在の両国間の年間貿易取引額は620億米ドルで、これは中国と米国間の6千億米ドルの約10分の1だ。
また、30日にはブラジルから米国に頻繁に旅行する人が必要事項を事前に登録し、入国審査の列に入らなくても済むようにする「グローバル・エントリー」に関する合意も発表された。この合意はリスクの少ない旅行者の便宜を図るためで、ビザ廃止は意味しない。