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85/95と年金受給=一般国民には有利か不利か=主婦にも受ける資格あり?

新しい暫定令676に関する記者会見にて(左から)バルボーザ企画相、ガバス社会福祉相、レヴィ財相(Lula Marques/Agência PT)

新しい暫定令676に関する記者会見にて(左から)バルボーザ企画相、ガバス社会福祉相、レヴィ財相(Lula Marques/Agência PT)

 連邦政府が財政調整のために出した遺族年金の受給資格などを厳しくする暫定令(MP)664は、議会によって修正された後、17日に大統領裁可を受けたが、「年金を積み立ててきた期間」と「年齢」の和が女性で85、男性も95になれば満額受給を可能とするという修正部分、いわゆる「85/95案」には拒否権が行使された。

 ジウマ大統領は「85/95案」をそのまま承認すれば、将来は社会保障費を負担しきれなくなるとして拒否権を行使した。その代わり、同案を基礎として、年齢と積み立て期間という二つの数字の和を少しずつ増やし、90/100まで持っていくというMP676を打ち出した。
 レヴィ財相、ガバス社会福祉相、バルボーザ企画相の3人は18日の記者会見でMP676についての説明を行ったが、上下両院議長や各政党のリーダー、労働組合の指導者達は早々と、MP676を拒否し、議会で修正を図る意向を表明している。だが、そもそも85/95案とは何を意味するのだろうか。
 現在60歳で年金の積み立ても35年間行ってきたという男性の場合、積み立てた年数と年齢の和は95に達しているから、これまでの平均給与が2千レアルだった人なら2千レアルの年金を受け取れるというのが85/95案だ。この男性の年金を、年齢と積み立てた期間、今後年金を受け取るであろう年数の3要素を取り入れた「従来通りの方法」で算定すると、85%の1700レアルしか受け取れない。
 また、平均給与2500レアルで58歳、積み立て期間36年という男性は、積み立て期間が年金受給の条件を満たしているため、受給申請が可能だが、従来の基準だと2025・50レアルしかもらえない。この場合は、年齢と積み立て期間の和は94だから、あと半年待って受給申請を行えば、二つの数字の和が95となり、2500レアルもらう事ができる。また、58歳で37年積み立ててきた男性は、85/95案なら2500レアルもらえるが、従来の方法だと82・5%の2062・50レアルしかもらえない。

若い受給者ほど有利な85/95法案

 同様に、55歳で平均給与が2千レアル、30年間年金を積み立ててきた女性が年金受給を申し出た場合は、85/95案なら2千レアルもらえるが、従来通りの算定法だと1400・40レアルしかもらえない。
 また、年齢と積み立て期間の和は85だが、年齢が50歳の場合は、85/95案なら2千レアルもらえても、従来の算定法だと67・6%の1689・50レアルしかもらえない。
 このように、85/95案は若くして働き始めた人は女性で60歳、男性でも65歳を待たなくても平均給与額を受け取る事を可能とする。従来の算定法では、積み立て期間が35年(男性、女性の場合は30年)を満たし、65歳(同、女性の場合は60歳)となった人でも、85%(同、女性の場合は70%)の額しかもらえない。
 これ以外の例に関しては、平均給与が3千レアルの人が年金をもらい始める年齢と積み立て期間、従来の算定方式で計算した年金額、85/95案を適用した場合の年金額を男女別に比較した表を参照願いたい。
 同表に従えば、35年間積み立てた男性が64歳以上で年金をもらい始める場合は、従来通りの算定方式の適用を要請した方が有利となるが、それ以外は、85/95案の方が年金受給額が多くなる。

心配される国庫の圧迫

 労働者達が85/95案に対する拒否権行使を嫌った理由はここにあるが、同案を認めれば、若くして退職し、長期間年金を受け取る人が増える可能性が高く、平均余命の延びや高齢者が労働人口の増加率以上に増えている事などで現在でも過重負担となっている社会保障費が、従来以上に膨れ上がり、国庫を圧迫する事は避けられない。
 そこで打ち出されたのが、平均余命の延びなどを加味して、当面は85/95案を維持するが、17年からは86/96、19年からは87/97、それ以降は毎年1ポイントずつ増やして、22年には95/100にするという案だ。
 なお、給与所得者は年金の積み立て分を給与から天引きされるが、自分には収入がないという専業主婦の場合は、最低15年間、年金の最低額から最高額(4663・75レアル)の間の額の20%(月々157~932・75レアル)を払うと、60歳にならなくても年金が受け取れる。
 60歳になってから受給するつもりなら、最低賃金の11%(現在なら86・68レアル)、低所得者世帯の場合は5%(39・40レアル)を15年以上収めるという方法もある。ただし、5%納付の場合は、国立社会保険院(INSS)に世帯収入が最賃二つ以下で本人は収入がないという事を申請しなくてはならない。
 主婦になる前に働いていた人の場合は、その年数も積み立て期間として認められるため、足りない年数分を積み立てれば年金受給資格が生じる。
 主婦が年金の積み立てを始める場合は、電話135(対応は月曜から土曜の午前7時~午後10時)か、社会福祉省のサイト(www.previdencia.gov.br)で申し込む、または、RGを持って社会福祉省の出張所に出向くのいずれかの方法をとればよい。
 なお、既に年金をもらっている人は、新しい方式を適用する事は出来ない。また、85/95の条件を満たさずに年金を受給する場合は、従来の算定方式が適用される事も明記しておく。(倫)

平均給与が3千レアルの男性の場合
受給開始年齢 積み立て期間 従来の算定比率 従来の年金額 新方式での年金額
55 40 0.808 2423.1 3000
56 39 0.816 2448.3 3000
57 38 0.825 2475 3000
58 37 0.834 2502.9 3000
59 36 0.84 2520.9 3000
60 35 0.85 2550.9 3000
61 35 0.888 2663.7 3000
62 35 0.924 2771.7 3000
63 35 0.962 2887.2 3000
64 35 1,009 3027.3 3000
65 35 1,054 3162.3 3000
平均給与が3千レアルの女性の場合
受給開始年齢 積み立て期間 従来の算定比率 従来の年金額 新方式での年金額
55 35 0.676 2027.4 3000
56 34 0.68 2039.7 3000
57 33 0.687 2059.8 3000
58 32 0.691 2073 3000
59 31 0.696 2086.5 3000
60 30 0.7 2100.6 3000
61 30 0.727 2181 3000
62 30 0.756 2267.1 3000
63 30 0.786 2358.9 3000
64 30 0.815 2446.2 3000
65 30 0.85 2550.9 3000